「自由に議論し問題提起」

−1−

根底に「役人的発想排除」

「少子化問題を考えるためには、発想の転換が避けられない。従来の縦割り行政では対応できない−というのが実感」。道庁の内部組織として発足間もない「少子化問題検討チーム」の座長、道保健福祉部児童家庭課の坂本博課長補佐(52)は今、検討課題の奥深さを痛感している。


写真

「従来の縦割り行政的な手法は通用しない」と語る坂本博座長
国立社会保障・人口問題研究所の都道府県別将来推計人口は、本道の年少人口(〇−十四歳)が一九九五年の九十万人から二〇〇〇年には八十万四千人、二〇〇五年は七十六万一千人となり、二〇二五年には六十一万八千人にまで激減するとはじき出している。「結婚する、しない」「子供を産む、産まない」はあくまで個人の問題だが、結婚や出産を妨げる外因的要素があるとすれば、その改善の道を探るのが行政の大きな使命だと考えている。

しかし、さまざまな要素が絡み合う問題を前に、一部分ごとに保育は児童家庭課、幼稚園や学校は道教委、働く女性については労政福祉課、といった対応はいかにも場当たり的。「少子化に対する認識のズレを抱えたまま、各部、各課ごとに対処するのは一つの行政機関として不自然だし、決して良い結果にならない」。俗にいう“お役所仕事”では太刀打ちできない−という危機感がチーム結成を促した。

若手を中心に構成

検討チームは、子育て支援の環境づくりを総括的に考える道エンゼルプラン推進委の一部会として、今年七月に発足した。メンバーは関係各課の係長や主査クラス、年齢的には三十代から四十代前半の二十人余で、庁内組織としてはまれな若手中心の構成。所属部局の代表ではなく、あくまで少子化問題に関心を持つ職員として個人的立場で参画していることも、このチームの特異性を際立たせている。根底にあるのは「役人的発想の排除」だ。


写真

道は子育て支援などの各種施策を冊子類でPRしているが、まだまだ検討課題は山積みしている
これまでに検討課題を(1)少子化の進行は問題なのか(2)少子化要因は(3)対策として行政がどこまで関与できるか(4)出産・育児の阻害要因は−など七項目に絞った。さらに「本道の特徴的な状況や日本的風土、企業を含めた社会的課題なども項目に追加する形で検討したい」という。

三歳までは親が常時付き添って育てるべき−という「三歳児神話」や婚外子、いわゆる未婚の母から生まれる子供の社会的認知問題、育児休暇後の復職時の諸問題、家事分業に対する意識など、数え上げれば切りがないほど検討対象は浮上する。「単身赴任にしても、家族の在り方という観点から考えれば検討課題になる。これまでの社会的風潮を切り崩すぐらいの気持ちで議論しなければ、このチームの存在意義がない」

「難しいがやりがい」

検討チームには、いつまでに結論を導き出す−という期限を設けていない。そう単純に報告書が作れるようなテーマではないと思っている。会議の中では「地球的規模で考えると少子化は歓迎すべきこと」など、個性的なさまざまな意見が続出する。既存の政策に対する批判も飛び出す。このチームは行政的対応を内側から変える“起爆剤”になるのではないかと感じている。

「組織横断的な対応が絶対必要だということははっきりしている。自由に論議し問題提起していくチームにしたい。難しいが、やりがいはある」。少子化を足掛かりに行政体質の殻を破ろうとする試みは、緒に就いたばかりだ。

年間キャンペーン「少子化時代を考える」は、十勝管内でも着々と進む少子社会に目を向け、さまざまな角度から分析、検討を加えてきた。最終の第六部では現在、少子化問題と真っ正面から向き合っている人たちにスポットを当て、その取り組みや認識、意見を通して今後の課題などを浮き彫りにする。(年間キャンペーン取材班=鈴木斉)


年間キャンペーン『少子化時代を考える』  WEB TOKACHIトップへ