「少子化対策とは?」

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女性の自立が契機に〜国の支援、男性の協力生む

「デンマークの出生率が上がったのは、女性の社会進出を進めようとしたからなんです」と、デンマーク社会省社会研究所のシニア研究員であるビタ・プルーツァン氏(58)は言う。デンマークの少子化対策を取材すると、行き着くのは「女性の自立」だ。女性のための施策が、結果的に子供を、産み育てやすい環境をつくり出している。

70年代に制度整備

きっかけは1960年代にデンマークが農業国から工業国へと転換し始めたことだった。労働力不足に陥った社会は、その解消を女性に求め、就業率は60年の22%から、10年後には80%まで上昇した。


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デンマークの出生率上昇は、日本に何を問い掛けているのか
次に賃金や休暇など男女平等を求める女性運動が活発になる。運動は女性が働く間、子供をどのように育てていくのかという要望にまで広がった。保育所や幼稚園、現在ある子育て支援策などはほぼ、70年代には整備された。

当然、男性の意識の変化も求められた。プルーツァン氏は「それまでは日本と同じように男は仕事、女は家庭という意識でしたから、男性は女性が社会にでることに対し、すごく戸惑ったんです。家庭の中でどういう立場を取っていいか分からなくなったんです」と、分析する。離婚率が急激に上がった時代でもあったが論議を重ねるうちに、男性の理解が得られるようになったという。

「女性が社会に出て、自立することが、『国の支援』と『男性の協力』にまで及んで、子供を産みやすい状況をつくり出したんです」

自分たちの意思で

デンマークの人々は自分たちの意思で、国に支援策を求め、現実にしてきた。しかし、一方で高い税負担を覚悟しなければならなかった。例えば所得税は50%、収入の半分は税金になる。また、商品のほとんどに日本の消費税に当たる付加価値税が25%加えられており、物価は日本と同等か、やや高い。賞与も一般的にないため、生活は苦しく、女性が社会に出て働くことは経済的にも、必然になっている。


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「女性の自立を支えた結果、出生率が上がった」と話すシニア研究員のプルーツァン氏
しかし、不満の声は上がっていない。2人の子供の父親で会社員のラース・マッセンさんは「高い税金を払うのを好む人はいないと思うが、それだけの見返りがある。自分たちの納めた税金がうまく使われているという実感がある」と話す。プルーツァン氏も「国民は現在の政策を、おおむね好意的に受け止めている」と言う。

代償を受け入れる

デンマーク人と結婚し、以来25年間、デンマークと日本を行き来しているブンゴード孝子さん(48)は言う。「デンマークの人たちには、国に支援を求める代わりに、その代償(高い税金)を受け入れている。自分たちはこれだけお金を払っているのだから、国はしっかりしてもらわないと困る、と政治の関心も高い。日本のようになれ合いではなく、責任の所在をはっきりとさせていて、ある意味では健全です」

少子化対策は、その国の人の意思にかかわってくる。至極、当然なことだが、日本ではなかなか表に出てこない。しかし、子供が少なくなっている今、結婚や家庭のことも含め、子育てのことを改めて、論議する時期なことは確かだ。(おわり)(年間キャンペーン取材班=猫島一人)


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