「浸透する育児休暇」

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男性も積極的に取得〜職場復帰もスムーズに

デンマークと日本との大きな違いは両親の休暇制度の「浸透度」にある。デンマーク取材でも少子化に歯止めをかける一番のポイントと指摘する声は多かった。

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「休暇は当然のこと」

コペンハーゲンの北、電車で20分余りに位置するゲントフテ市。緑豊かで閑静な住宅街が広がるこの町に、ラコピダン夫妻は2人の子供と共に住んでいる。「息子のクリスチャン(9つ)の時は生後6カ月まで、娘のジュリエ(6つ)の時は生後10カ月まで仕事を休んだけれど、勤め先は休暇は当然のことと認めてくれているから、何もためらわず取れたわ」とトリーネさん(35)は当時を振り返る。

夫のポールさん(39)と知り合ったのは16年前の乗馬クラブでのパーティー。2人の交際が始まり、トリーネさんは看護婦、ポールさんはエンジニアとして働き出した1987年に結婚した。

賃金の6割給付


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休暇制度があったので、子育てに障害はなかった−と話すトリーネさんと子供たち
2年後、トリーネさんはクリスチャン君を出産する。当時は産前産後合わせて32週間の休暇を取ることができた(現在は26週間)。育児休暇は24週間。日本と比べて期間の長さに大差はないが、育児休暇中の国からの給付金額が日本は賃金の2割に対し、6割と良い。しかし、なんといっても「職種に限らず、会社を休むことを保証されていて、復帰もスムーズ」(トリーネさん)なことが大きい。

デンマークでは、女性に限らず、男性も休暇を積極的に取る。ポールさんは日ごろから出張が多く帰宅も遅かったが、それでも休暇を取ってトリーネさんと共に育児に励んだという。日本では92年に育児休業法が施行になったが、5年後に労働省が実施した全国7700社余りの企業を対象とした調査によると、出産した女性社員のうち育児休業を取ったのは全体の44.5%、妻が出産した男性社員に至ってはわずか0.16%だった。

出生率上昇の要因に

トリーネさんは「両親は医者で、私も看護婦ですから、ほかの人よりは出産の知識はある程度ありました。それでも子供と一緒に過ごせる時間があるというのは、安心感がある。特に長女は早産だったので、助かりました」と休暇の恩恵を改めて言う。人口統計研究所のリスベット・クヌッセン氏も「今、デンマークの出生率が上昇しているのは、育児休暇のおかげ」と指摘。幼稚園や保育所の職員らも、「休暇は両親になくてはならない」とし、子育てに直接影響する制度ととらえている。

「長男を産んだときは既に約1,500万円で家を買っていて、貯金もなく、月々のローン返済は2人の収入の3割を占めていたんです。それでも収入減を覚悟してまで、子供を作ろうと思ったのは、勤め先や社会の理解があったから」

日本は法律という基盤はあるものの、まだまだ休暇を取りやすい環境にはなっていない。特に女性はしばしば出産か、仕事かの二者択一を迫られる。社会が子育てを夫婦間の問題としてしかとらえていないからだ。デンマークとの違いは、そこにある。 (年間キャンペーン取材班=猫島一人)


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