「森で遊ぶ自然幼稚園」

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子供に自信や責任感〜親との信頼感も増幅

ここ数年、デンマークで広がりを見せている施設の取り組みがある。親の間でも評判が高く、入園希望が多くなっているという。「安心して預けることができる」施設づくりが、親の「仕事と育児の両立」に余裕を持たせている。少子化抑制のカギがここにもある。

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自然幼稚園では毎日、午前9時半になると森に向け出発する
デンマーク北部の港町エルシノア市郊外。クナイステン幼稚園は、デンマークで急速に取り入れられている「自然幼稚園」の一つだ。この日は気温が低く、子供たちはきっちりと防寒着に身を包んで寒そうだったが、これからの“出発”を今か今かと待ち構えていた。

毎日、裏に広がる森へ

園の一番の特徴は、施設の裏に広がる森に毎日出掛けることだ。定員は20人。園舎は普通の幼稚園とは別に隣接して建てられており、独立して運営されている。「きょう森に行くのは6人。新学期が始まったばかりで、園に慣れていない子もいるので少なめです」と、ローネ・アンネベア園長(54)は笑顔で子供たちの身支度を手伝っていた。

午前9時半に出発、子供たちは互いの手をしっかり握り、園前の道を渡り茂みに入る。するとすぐに広大な芝生が広がった。広さは3ヘクタールぐらいだろうか。もともと個人の所有だったが、子供たちのために開放しているそうだ。

“名所”を巡り遊ぶ

300メートルほど歩くと子供たちが一斉に駆け出した。第一の目的地、アリ塚が見えてきたからだ。すぐ横には100年以上前のワイン倉庫跡もあった。「お化けの地下牢(ろう)って言うんだ」と人懐っこいビクター君(5つ)が教えてくれた。

池の横を慎重に通り抜け、坂道を駆け登る。高さ3メートル、直径1メートルの大木「王様のいす」、幹に小さな子供が通れるほどの穴が開いている「魔法の木」、そのほか「柳の渡り」「お猿のジャングル」など多くの“名所”に立ち寄った。すべて子供たちが命名したものだ。


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子供たちは森の中で、いっそうの好奇心を見せる
2時間後。長さ20メートルはあると思われる大木が横たわる「木登りの木」に到着した時、事件は起こった。子供たちの格好の遊び場だが、この日は枝が乾燥し、滑りやすくなっていた。エミール君(5つ)が幹から足を踏み外して落ちた。頭を少し打ったらしい。同時に大きな泣き声が森に響いた。

自分の限度を知る

アンネベア園長はすかさず駆け出し、「大丈夫?」といたわった。本人にとって相当な痛みだったらしく、なかなか泣きやまない。20分ほどで、ようやく立ち上がった。「あの子は先走っちゃうから」とアンネベア園長は苦笑いするが、「確かに子供たちを自由にさせるのは危なっかしいが、“あれはしちゃいけない、これはしちゃいけない”とは言いません。転んで泣いたりしても、子供たちは自分で自分の限度を知ることができる良い経験。次からはしなくなるでしょう?」。最後は簡単なアスレチックがある「森の遊園地」に寄って、園に戻った。約1キロ、3時間の散歩だった。

兄弟園児も増える

自然幼稚園の大きなメリットは「子供たちの運動機能を伸ばせる」ことだ。また、小さい者へのいたわりや「自分でできる」といった自信や責任感が生まれるという。

「子供たちに良い影響を与えている」とアンネベア園長は話す。結果的に親との信頼感が増し、「たくさん子供をもうけても安心」という夫婦も増えている。その表れとして、園児の25%が3人兄弟。以前はほとんどいなかったという。(年間キャンペーン取材班=猫島一人)


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