「保育所・幼稚園の充実」

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最高の環境で育児を〜カリキュラム編成

若い夫婦が増え、子供の数が増えているデンマーク北部の都市、ヘルシノア。働く女性が多いため、乳幼児を預ける保育所、幼稚園の充実は欠かせない。自然と親の期待も高まり、施設運営や職員の心構えも変化している。“安心して子供を預けられる場所”の確保も少子化を抑える一つの要因となっている。


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保育所では朝食と昼食のほかに、午前、午後に1度ずつ間食を取る
午前8時。穏やかな風と心地よい太陽の光が注ぐ中、ヘルシノア市内の住宅街のはずれにあるヒーメルブロ保育所へ、親に手を引かれた子供たちがやって来た。

費用は日本並み

同保育所は零歳から3歳の乳幼児を預かっている。時間は午前7時から午後5時半(金曜日は午後4時)までで、土、日曜日は休み。保母10人で31人の子供を保育している。デンマークは、小・中学校、高等教育は無料だが、保育所と幼稚園だけは費用がかかる。3分の2は国が負担するが、それでもヒーメルブロは満額で月に2,190クローネ(4万5,990円)が必要。保護者の収入や兄弟の数で減額もあるが、ほぼ全国平均の額という。費用に限っては、それほど日本と大きな違いはない。

ただ、同市の保育所カバー率は60%(幼稚園は100%のカバー率)。加えて、デイケアと呼ばれる個人の託児所もある。同市に限らずデンマークの保育施設は充実しており、ヨーロッパの中でも飛び抜けている。

年長の子供たちは近くにある図書館のイベントに参加するため、早々に出発。残りの子供たちは外の遊び場でひとしきり遊んだ後、間食として、たっぷりとバターをぬった手作りパンをほお張った。その後も泥いじりをしたり、ブランコに乗ってみたりとそれぞれの遊びに熱中していた。

人間性重視の保育費

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デンマークでは保育所に対する親の関心が高まっていると話すホイリュー園長
カーレン・アンドレアセン所長(44)は最近のデンマークの保育事情を「以前はしつけがちゃんとされ、清潔感があるものを求められてきたが、今は人間性重視です。社会性プラス精神的安定が目標です」という。日々の保育内容も変わってきている。「“きょうはこれをやろう”と決まったものをやるのではなく、子供一人ひとりの性格や体調に合わせて、保母の裁量でその場で決めています」

親とのかかわりも密接になっている。デンマークは保育所を終えた後は、小学校前まで幼稚園で過ごすのが一般的だが、同市にあるギューベルホイ幼稚園のランディ・ホイリュー園長(39)は「この仕事に就いて20年になりますが、最近は特に親の子供への関心が高まっている」という。実際、この日も母親2人が園の見学に訪れ、わが子の様子をつぶさに見守っていた。父母会も積極的に園の年間カリキュラムの編成に参加、意見を反映させているという。「最高の環境で育てたいという意識を持つ親が多い」という。

父母と意見が対立も

時には、親と施設の間で意見が対立することもある。「親の声に耳を傾けつつ、指導とも思えるぐらいこちらの意見を通すこともある。保育するだけではなく、それも保母の仕事になってきました」とホイリュー園長。デンマークのどの保育所、幼稚園も試行錯誤の中にある。しかし、施設と利用者との間に信頼感を築くことが、ひいては子供を産む助けになるのだろう。(年間キャンペーン取材班=猫島一人)


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