「充実する自治体の施策」

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物心両面きめ細かく〜市予算の3分の1以上割く

首都のコペンハーゲンから北に50キロのところにある人口5万8,000人の都市エルシノア。東にエレソン海峡を臨む港町で、対岸にはスウェーデンの町が広がる。夏には観光バスが大挙して海峡を越えてデンマーク入りするため、高速道路に向かう市内の道は大混雑するという。

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エルシノア市は国境の町以外でも、充実した福祉政策を推進する自治体として知られている。「デンマーク」の縮図を、子育て支援の面でも見ることができる。

保健婦が全家庭巡回

同市の乳幼児、児童に対する基本方針は(1)密度の濃いケア(2)安心感のあるケア(3)地域でのケア(4)保護者との密接な関係−の4点。その一環として「保健婦の家庭訪問システム」がある。どの市町村でも実施されているシステムだが、同市の場合、19人の保健婦が市内の乳児、幼児を抱える全家庭にサービスを提供する。0歳から1年間は平均で7回、保健婦が各家庭を訪ねる。母乳の与え方や子供との接し方をアドバイスするほか、母親も含めた食事管理、その他、育児相談などを受ける。市の子供と青少年部で保健婦長を務めるアンネ・ボイさん(50)は「一番多い相談は母乳のこと。次に夜泣きして、なかなか寝つかないといった相談が多い」と丁寧に答える。

家庭医利用は無料

1歳以降も必要とあれば定期的に訪問し、最長で小学校前までサービスが受けることができる。その後は年に一度、子供たちの通う小学校に出向き、身体チェックを行うという。ボイさんは「デンマークも核家族化が進んでいて、近所に親せきがいない場合が多い。だから初産のお母さんの中には、われわれを祖父母のように感じている人も多いんですよ」とシステムの重要性を強調する。

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さまざまな子育て支援策が結果的に少子化対策になっていると話すエルシノア市のボイさん(左)とロブトロップさん
このほか、医療面では国内に14ある県が管轄して家庭医を配置1歳までに4度、その後は小学校入学まで年に一度、ワクチン注射や身長体重の測定、母も含めた健康診断を行っている。特徴的なのは保健婦、家庭医どちらも無料で利用できることだ。

「子供小切手」で援助

さらに経済的援助がある。デンマークは「子供小切手」と呼ばれる資金を拠出している。対象は0歳から18歳までで、毎年4回支給され、1回につき2,500クローネ(約5万2,500円)。3歳からは2,150クローネになる。また、エルシノア市では家庭状況によっては、最高で3万5,000クローネ(約73万5,000円)を支給している。「学校の運営費用なども含めてですが、子供の青少年課の年間予算は6億4,000万クローネ。市の総予算の3分の1以上を占める額ですが、これだけの税金を使っているかいがあって、エルシノアでは若い家庭が増えているんです」とボイさん。

女性の自立助ける

「デンマークでは共働き夫婦がほとんど。自治体の施策は特に、女性の自立を助けるものになっている」と、幼稚園や保育園を管轄するデイケア部のリーダー、リスベット・ロブトロップさん(46)は言う。「親のために子育て支援をすることを念頭に置いた結果が、少子化対策になっているんです」。(年間キャンペーン取材班=猫島一人)


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