親子の絆

−6−

「過干渉」と「放任」の二極化へ

7月初め、帯広保育所(帯広市東3南11)恒例の「泊まり保育」で、保母たちは驚いた。泊まり保育は年長の5歳児25人が親から離れ、保育所に泊まり込む年1回の行事だが、無事1泊した翌日の朝、半数の子供たちが朝食を一切口にせず、残してしまったからだ。

写真
少子化は社会の流れと絡み合い、子供の成長にも影響を与える(写真は本文と関係ありません)
前夜の夕食後、子供たちは何も食べていない。この朝は6時に起床し、6時半から30分かけて保育所周辺を散歩した。「絶対におなかが空いているはずなのに…」(金曽優子所長)。しかし、子供たちはご飯はおろか、おかずにも手を付けなかった。「朝食を食べない子は毎年、何人かいるが、今年は飛び抜けて多かった。食べない傾向になってきているんでしょうね」。金曽所長はため息を漏らした。

さらに気になることがあった。朝食をまったく受け付けなかった子供たちが、デザートのメロンだけは見事に平らげた。「甘い物は食べ慣れている。大切な食事にはこだわらず、子供たちが好きなお菓子やジュースはよく与えているんだろうなと思った」という。保母たちはそんな子供らの様子を通じて、親たちの姿をひしひしと感じていた。

友達と遊べない、何事も長続きしない、明るくもない。かといって非常に困った子でもない。ある保育所の保母(46)は最近、「つかみどころのない子供」が多くなっていると実感している。大人に甘えたがっている子が多いとも思う。自分を常に見ていてほしくて、保母が抱き上げるまで泣き続けたり、いつまでも、そばから離れようとしない。「愛情に飢えている」と感じ、「保育所を卒園したら、この子はどうなるのだろう」と思ってしまうという。

保育所への送迎時に、子供が嫌がるまで抱きしめている親がいる半面、他人の子のようにつっけんどんな親もいる。子供のちょっとしたことまで気になってしまう“過干渉”の親たちの対極には、子供の意思を尊重する−との名目を掲げて放任主義に徹してしまう親がいる。二極化しているように見えるが、共通して浮かび上がるのは、子供の気持ちをうまく受け入れられない、「子育てに自信のない親たち」(小野豊子・帯広市子育て支援システム会長)の姿だ。

幼児を持つ親の多くは、塾通いや習い事が一般化し、偏差値教育が熱を帯びていた時代に生まれた年齢層に当たる。小野会長は「その当時の子供たちが今、大人になり、子育てをしている。子育てに対する考え方が昔とは大きく変わってしまうのは当然」という。しかし、子育てに関する情報がテレビや雑誌から大量に流れる中、本来持つべき自分の子育て論を作り上げられずにいる−と、現状の問題点も指摘する。

保育所に入るときに提出する書類には、どの親も必ず「優しく明るい子に育ってほしい」とわが子に寄せる思いを記す。この思いは今も昔も何ら変わらない。ただ、親同士や地域との関係が希薄化し、周りに子供たちも少ないという環境の中では、親が子供に与える影響の大きさは増すばかり。少子社会は、これまで以上に親の自覚と責任、子供との確かな絆(きずな)が問われる時代なのかもしれない。(年間キャンペーン取材班)(第4部おわり)


年間キャンペーン『少子化時代を考える』  WEB TOKACHIトップへ