小売業界の対応

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売り場拡大や高級化〜差別化へ戦略練る大型店

「商売というのは意外に時代に合ったもの、流行を作り出すパワーがある。それが少子化をカバーする」。統計情報研究開発センターが算出した2025年までの十勝の人口推計値をみた藤丸の中高進・子供服雑貨課課長代理から、少子化を悲観しない業界の象徴的な言葉が返ってきた。

業界では子供に費やす金の出どころを「5つのポケット」と称している。親と両祖父母の5つの財布という意味だ。「祖父母のポケットは裕福。このポケットから放出される金を目当てに子供用品が次第にブランド化、高級化していく」(同課長代理)。子供が減ったとしても商品単価が高くなる分だけ、売り上げは維持できる−とみるのが業界の共通の認識だ。

サティ帯広店の新居舜輔店長は「子供服だけ、女性だけといった従来の鳥小屋スタイルではなく、家族を一消費者としてトータルに提案できる売り場にしている」と少子化をにらんだ経営戦略を示す。子供、家族関連売り場を大幅に広げ、百貨店との“距離”を縮めるため商品の一部をブランド化。さらにテナントと直営をミックスさせ、系列店にはない帯広店の独自戦略を打ち出した。

長崎屋帯広店もリニューアル(改装)に際し「親が30代のファミリー層を狙い、分散していた子供向け売り場をひとまとめにして面積を20%増やした」(小崎幸一次長)。

十勝管内市町村別 0−14歳人口の推計(人)
(財)統計情報研究開発センター

1995年 2000年 2005年 2010年 2015年 2020年 2025年
帯広市 29,845 27,469 25,720 24,366 23,088 21,857 20,379
音更町 6,600 6,768 7,311 7,779 8,323 8,943 9,451
士幌町 1,302 1,121 991 930 866 805 746
上士幌町 931 759 595 503 419 344 278
鹿追町 1,188 1,041 893 839 786 735 678
新得町 1,169 947 759 623 518 428 352
清水町 1,860 1,587 1,361 1,172 1,010 873 752
芽室町 3,035 2,694 2,463 2,339 2,213 2,090 1,945
中札内村 708 647 571 538 505 471 436
更別村 641 573 515 465 413 370 333
忠類村 273 201 136 109 86 68 53
大樹町 1,210 976 796 666 556 466 387
広尾町 1,754 1,436 1,137 930 760 617 501
幕別町 3,932 3,664 3,453 3,359 3,289 3,229 3,105
池田町 1,385 1,156 992 834 706 599 501
豊頃町 721 571 438 359 292 238 195
本別町 1,600 1,168 936 735 574 453 349
足寄町 1,445 1,164 990 803 654 533 430
陸別町 415 316 251 192 150 117 88
浦幌町 1,312 1,018 792 635 509 408 326
同店の試算では一家族が支出する子供衣料の年間平均消費額は1万4,380円。これを管内世帯数に掛けると、衣料だけでも約20億円の市場になる。帯広市内の百貨店、量販店の責任者からは「少ないパイの食い合いで競争が激化する。どうやって他店との差別化を図り、市場占有率を上げるかが課題」と同じ言葉が返ってきた。

一方で、商品だけにとどまらず店内での育児教室や子育て支援事業に乗り出す動きも出ている。藤丸は出産後の育児教室、栄養相談などを開催。「百貨店として子育ての心得、支援などの面でサービスを充実させたい」(中高課長代理)としている。サティも「リニューアルで子供クラブ、子供の写真スタジオ、音楽教室を設けた。評判は上々」(新居店長)という。

いずれも少子化をにらむ集客戦略で、購買動向をみながら全体の占有率を上げることに業界はあの手この手でしのぎを削る。藤丸の藤本長章社長は「管内定住人口が減るとの予想だが、交通網の充実で道東一帯を商圏とみるなら、まだまだ潜在需要は眠っている」と説明。少子化に対し総じて大型店はプラス思考だ。

これに対し、小規模地元業者の危機感は強い。少子化で子供用品の売り上げが減り、これに大型店や量販店の“戦略”が拍車をかける形となり、厳しさは増すばかりだ。玩具(がんぐ)卸販売・アサヒ商事(帯広市東2南10)の藤村常信社長は「玩具でも既存の地元店は成り立たなくなってきている。子供がいないのが一番の打撃だが、量販店の値段や乱売には太刀打ちできない。量販店で扱わない商品を選んで売るしかない状況」という。

少子化は大型店や量販店、さらに地元小売業者らを巻き込み、業界の“姿”に影響を与え始めている。機を見るに敏−。生き残りをかけた試行は、十勝でも既に始まっている。(おわり)(年間キャンペーン取材班=道下恵次、鈴木斉)


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