危機感募らす私学

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経営不安に直結〜“生き残り”かけ戦略練る

「ベビーブームが過ぎ、児童生徒数が減りはじめた1980年代中ごろから、もう危機感はありました。今に始まった問題じゃないんです」。統計情報研究開発センターが出した十勝の推計値を見て、道私立中学高等学校協会帯広支部長の多田順一江陵高校校長は驚く様子もなく淡々と話す。

少子化が教育界に与える影響で、一番直接的かつ深刻なのは児童生徒数の減少だ。それは私学にとってはイコール、経営への不安につながる。「まず考えなければならないのは、生き残りをどういうふうな作戦でやっていくかということです」(多田校長)

ぐらふ
ここ数年、全国的にも私立大学などの学科、学部改変、短大の4年制大学転換など、各校の“生き残り策”が目に見えてきている。帯広大谷短大では95年度から内部に基本構想検討委を設け、社会動態の変化に合わせた短大の在り方、教育内容全般について分析し、具体的な計画を練ってきた。その結果、来年度には人気ある介護福祉専攻の定員増、男女共学化といった思い切った改革を打ち出している。

また、帯広コンピュータ専門学校は少子化だけでなく、高校生の志向変化や時代の要請に対応し、今年度は2科5コース制へ学科再編。これに続き、来年度は新学科の新設も検討するなど動きを活発化させている。もちろん、こうした改革が少子化対策として即、人数増に結びつくものではないものの「黙って少子化社会を迎えるわけにはいかない」との危機感が各校を動かしている。

その一方で私立高校は難しい局面を迎える。経営上、生徒数を増やしたくても、公立高との公私協調の立場から7対3の比率があり、中卒生徒数の減少に合わせて定員減を余儀なくされるからだ。管内の中卒者の人数は2000年にいったん4,634人に増加するものの、2001年からは年間40〜200人ほどの幅で減少の一途をたどる。こうした中、自衛策として、白樺学園高校は校舎の移転新築など魅力ある教育環境整備を完了、帯広北高でも学校寮の設置で管内広域からの生徒獲得につなげようとしている。

こうした目に見える生徒獲得策だけではない。「現在、既に入学希望者でも(成績の)下の方は切っている。学校全体のレベルを底上げし、足腰を強くしてこれからに備えるしかない」(藤川寛帯広大谷高教頭)。公立高の補完的役割を担ってきたこれまでの立場を変え、地域のニーズに合った“選ばれる”学校づくりをいかに行うか、学校経営の上で転機に来ているといえる。

少子化で学校存続の危機に瀕(ひん)しているのは私学だけではない。公立高も将来的には再編がささやかれ、小中学校でも過疎地域では統廃合が年間3、4校のペースで進んでいる。十勝小中校長会会長の斉藤喜志雄音更中校長はこう指摘する。「少子化が進み、規制緩和で通学区域の弾力化が始まると、間違いなく学校の再編が始まるだろう。公立学校であろうとも、確実に学校淘汰(とうた)、教師淘汰の時代はやってくる」。時代背景や地域社会、子供、保護者の期待に合わせ、公私を問わず学校側も意識変革を迫られる時期にきている。(年間キャンペーン取材班=小関伸子)


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