特殊出生率トップの更別村

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高い農家の出生率〜カギを握る農業施策の行方

「子供の数が3人の家庭はざらですよ。特に農家では」。更別村で聞いた何人かの住民の声だ。これを裏付けるように、十勝管内の合計特殊出生率(一人の女性が一生の間に生む子供の数)を自治体別に比較すると、更別が約2.07でトップになっている。同出生率は道、十勝地域保健医療協議会が1991年から95年までのデータをまとめたもので、厚生省が算出した95年の全国の合計特殊出生率1.42、全道の1.31に比べても圧倒的に高い。

更別村の資料を基に、村内農村地域のある地区を限定して調べた結果、第一子が14歳以下の家庭では、子供数が1人と2人の家がそれぞれ一世帯で、子供3人家族が5世帯と最も多かった。子供5人の家庭も一世帯あり、平均すると子供数は2.8人となった。

ぐらふ
さらに、同地区では第一子が15歳から18歳の家庭では、平均子供数が3.5人とはね上がる。

同村民生課の安村豊治課長は「更別は一戸当たりの農業所得が十勝でもトップクラス。農家の考えとしては財産、土地を子に継がせたいという意識は強い。それが農家の子供の多さにつながっているのではないか。ほかの自治体の農家でも同じような傾向はあると思う」と分析。合計特殊出生率の高さは、こうした農家の意識が少なからず影響しているともみられる。

村の人口は3,441人(4月末現在)。林清村長は「村の約3分の1は農家で、農家世帯は約280戸。今は若者の定着率が高く、経営規模も大きくて所得も高い」とし「子供は一人でいい−という親は少ないと思う。更別はある意味でノーマルなだけです」と語る。「精神的に裕福」という言葉を口にする住民も多い。このあたりに高出生率の“キーワード”が隠されているのかもしれない。

しかし、農業基盤は常に国の政策に影響される。当然、農家の生活状況の変容に伴い、従来高い出生率も何らかの変化を余儀なくされる可能性もある。林村長も「農業政策が今後どうなるのか不透明だ」と指摘。将来を見据えた場合の不安感はぬぐえない。

統計情報研究開発センターが算出した管内の将来人口推計値では、ほとんどの自治体で人口、さらに0〜14歳の子供の数は減り続ける。更別も2025年には人口が現在より約1,000人少ない2,461人、0〜14歳の子供数も現状の約半数の333人にまで激減する−とはじき出されている。

更別では93年から第三子以降の出産に関して、村から出産祝い金として10万円を出している。林村長は「祝い金を出して出産率を上げるというよりも、経済的に少しでも援助できればとの考えで実施している」というが、少子化傾向に歯止めをかけるための模索ともいえそう。

ほかの自治体でも「行政としては延長保育の充実や住宅問題など、子育てしやすい環境の整備を進めていくが、少子社会の危機感はあっても、なかなか想像がつかない部分も多い」(帯広市福祉部児童家庭課の小林光司課長)というのが実情。自治体にとって、少子化対策はまだ手探りの状態だ。(年間キャンペーン取材班=竹村浩則)


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