十勝は今〜低出生率の背景

−6−

農村生活にも都会化の波〜核家族化も進む

農業後継者の結婚難は、家族経営を前提とする十勝の基幹産業を揺るがす問題だ。管内では既にいくつかの自治体が、農業青年に出会いの場を与える花嫁推進事業に取り組んでいる。芽室町では昨年度から、中部地方出身の農業婦人12人でつくる「フレンズめむろ」(福田千嘉子代表)が主体となり、名古屋市内でほかの市町村に先駆けて単独交流会を開催、早くも成果を上げている。

現在、同町の農家は約800戸。このうち、20、30代の独身後継者が暮らすのは140戸ほどで、既婚率はほぼ50%という。農業青年の結婚が難しい最大の理由としては、1996年2月に開かれた「農村リフレッシュ・フォーラム」の席上、彼ら自身から「日常生活の中で女性と知り合うチャンスがない」という意見が上がっている。

写真
農村青年と名古屋女性の交流会。小子化を解消するまでの道のりはまだまだ遠い

これに対し、町農業委員会の小林正彦係長は「農家だから恋人ができないのではない。進んで社交の場を求めない青年本人がいけない」と指摘する。昨年3月の名古屋交流会では後継者15人と現地女性21人が集まり、1人5分間ずつの個人面談と立食パーティー、自由行動のデートタイムなどを通して仲を深めた。今年秋には、早くも2組が挙式の予定という。

参加女性の大半は20、30代の都市部に住むOLで、事前研修時の調査によると、多くの人は十勝の自然に囲まれて暮らしたいという願望を抱いている。また、結婚については、相性さえ合えば農家の忙しさや経営の苦労は気にしないとする傾向が強い。

小林係長は「農家の生活が都会化している現代、女性の意識も変わりつつある。逆に言えば、農業青年にも都会の男性と同じセンスやマナーが必要とされている」と分析。これを受け、参加青年も本番の1年近く前から女性との会話法やファッション向上などの研修に励み、人間的な魅力を磨きながら結婚意識の高揚に努めている。

一方、ライフスタイルの変化は、農村に思わぬ少子傾向をもたらした。近年は結婚にこぎつけた農業者が、自分たちのプライバシーを守りたいという若者気質や大型機械で実現した作業の省力化などで市街地に住まいを移し、農場を仕事場として“通勤”するケースが増加。この結果、地域の“核施設”の役割を担う学校の統廃合などが進み、コミュニティー全体の崩壊まで懸念されている。

生活様式の広がりは、核家族を希望し、農業とは別の職業で自分を生かそうとする女性にとって歓迎すべきことであるのは確かだ。しかし一方で、子供たちの姿が失われつつある農村の姿は、地域が健全な発展を遂げる上で決して好ましくないといえる。

後継者の結婚が実っても解決できない少子化の問題をどう乗り越えるか。近年、都市生活者を対象にしたグリーンツーリズム(農村休暇)促進や農家の合併浄化槽整備といった政策を通して優れた生活環境づくりが進められている。芽室町をはじめとする各自治体の取り組みは、まだまだ始まったばかりだ。(年間キャンペーン取材班=岩城由彦)(第2部おわり)


年間キャンペーン『少子化時代を考える』  WEB TOKACHIトップへ