十勝は今〜低出生率の背景

−2−

経済的要因がトップ〜自分の幸せも追求、女性の意識変化も

「子供を一人前にするにはお金がかかる。できれば2人は欲しかったのですが、経済的なことを考えると…。年齢的にももう(出産は)考えていません」−帯広市内のA子さん(39)は言う。10年ほど前から店員の仕事をしており、一人息子(5つ)は保育所に預けている。今は自宅と勤め先、その中間に位置する公立保育所を往復する毎日だ。

育児に要する経済的な負担が、少子化の原因と指摘されている。21世紀十勝福祉塾が十勝管内の約4,000人を対象に実施した意識調査でも、未婚、既婚合わせて「子供が欲しくない」と答えた理由で最も多いのが経済的要因だ。

グラフ

A子さんの場合も「出産を機に仕事を辞めようと考えましたが、少しでも家計の助けにと思い、働き続けることにしました」。現在、A子さんの月収は15万円。夫(42)と合わせると、月40万円余りとなる。それに対し保育費用は約3万3,000円。「一人ですし、これは払えない金額ではありません」

その一方で、共働きの理由は経済的なものばかりではないとの指摘もある。市立日赤東、依田保育所の山田佳代子所長は「生活を支えるためだけに共働きしている世帯はむしろ少数派。子供の幸せと同時に、自分の幸せや充実感を追求する母親が増えてきたのを感じます。女性の生き方が変わってきたのではないでしょうか。もちろん父親も変わっています」と“分析”する。

「家計を助けること」を働く動機に挙げたA子さんも「家に閉じこもって育児ストレスをためるより、働きに出る方が私に合っていると思いました。働いていると、子供と接する時間が減り、かわいそうと思うこともありますが、その分、一緒にいるときは触れ合いの密度が濃い感じ。仕事をしているから、逆に育児の時間は充実しています」と話す。働く動機はひと言では説明できないようだ。

出産後も働く母親が増えていることで、「出生数は減っているのに、保育の需要は逆に強くなっているのではないか」と帯広市家庭児童課の小林光司課長は感じている。

帯広市を例にとると、保育料は所得税額によって20段階に細分化されている。生活保護世帯は無料。最も多く納める階層は3歳未満だと8万3,560円、3歳以上だと3万4,300円払う。複数の子供を預けると保育費負担は親に重くのしかかってくるが、それでも“需要”は高い。4月からの入所申し込みは過去10年で最高を記録した。

保育内容の見直しも急速に進んでいる。1歳未満を預かる「乳児保育」や午後6時、7時まで預かる「延長保育」などは、私立ではもはや“常識”。市立でも今年度1カ所のみだった「乳児保育」が新年度5カ所に増える。午後7時までの「延長」も登場する。

この分野ではさらに、休日保育や不定期の一時保育、法定伝染病にかかった児童を預かる病児保育などさまざまの“需要”がある。市内のやまびこ保育所の中岡星子所長は「子育てに関する考え方や働くことに対する意識−今はこれらの違いによって、いくつもの選択肢があります」と言う。

保育環境は年々充実しているが、「子供はいらない」「子供は少なくて良い」という選択に行き着くカップルが増えている。その背景には経済的な要因はもちろん、育児や教育、共働きに対する考え方が複雑に絡み合っている。(年間キャンペーン取材班=高久佳也)


年間キャンペーン『少子化時代を考える』  WEB TOKACHIトップへ