少子社会の波紋〜揺れる地域から

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塾の再編進む神戸・大阪

「少子化の波が押し寄せようとしている。先手先手で対策を打たないと塾の将来はない」。大手学習塾ティエラ(本社神戸市)の増澤空社長は危機感を口にする。同社は生徒の増加などシェア獲得のため、一昨年9月に日進学院(本社明石市)と合併、昨年8月には開成ゼミナール(本社加古川市)の全株式を取得した。生徒数は2万6,000人に上る。増澤社長は「生徒が集まらない塾が多い中、中国地方全域をカバーするネットワークを確立できた。従来の石川県金沢から、九州長崎までの進出に加え、体制強化になった」と力を込める。

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合併案が浮上したのは1995年4月。日進学院、開成ゼミナールとも中堅の学習塾だが、「教諭確保など経営のかじ取りで行き詰まったことに加え、子供が少なく、収益が上がっていなかった」と増澤社長は説明する。

80年代後半には大手学習塾が次々と株式公開に踏み切るほど、学習塾業界は右肩上がりの成長を続けてきた。

しかし、少子化で塾経営は岐路に立たされる。パイ(生徒)の減少は経営を直撃。業界の収益は低下し、97年3月期の決算では株式公開する全国14社の塾のうち、11社の経常利益が前年を下回った。「このままでは(塾は)つぶれる」。経営者は一様に危機感を募らせる。このため、生き残りをかけた事業の見直しをする塾も出始めた。

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「現在も複数の塾から提携できないかという話が来ている」と話すティエラの増澤社長

中でも大阪、神戸を中心とした関西地区は塾再編への動きが急だ。「第一ゼミナール」の名で、幼児から高校生までの学習塾を展開する第一教研(本社大阪市)は4月、大検予備校の学育社(本社東京)と合併する。「高校の中途退学者の増加で、大検指導に需要があるとにらんで、合併に踏み切った」と坂田正敏総務部長は話す。

同社は大阪のほか、高松や岡山、広島に80校を開設しており、関東を中心とした学育社と競合しないのも、合併への追い風になった。2002年までに大検指導校を現在の20余りから、全国で50校まで増やす計画だ。坂田部長は「今後、小・中学生の指導だけでは収益はあまり期待できない。それに比べ、大検市場は有望で、経営は10年は大丈夫」とみている。

一方、全国で180校を持つ教育総研(本社大阪市)とティエラは約4年前、相手の教室がある地域には進出しない“相互不可侵”の協定を結んだ。


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同じ広告費をかけても、以前のように生徒が集まらなくなった(写真のパンフレットと本文は関係ありません)

教育総研広報の土屋公俊氏は「両社が友好的な関係だったこともあるが、このまま競争を続ければ、共倒れになる可能性があった」と理由を述べる。 数年前に互いの教室の整理を始め、94年にティエラが倉敷の、教育総研が長崎の各校を廃止することで、住み分けが完了。両社によると「これまで塾業界では見られなかったケースだが、少子化をにらんだ戦略の一つでもある」と述べている。

ただ合併や業務提携は、少子化に対し一時しのぎではあっても、根本的な解決にはならない。国の調査によると1歳から5歳までの各年齢層は現在の中学生よりも30万人少ない、120万人前後。これから生まれる子供はさらに減少することが予想されている。「絶対数の少なさはどうしようもない。経営はかなり厳しくなるだろうし、とうたもこれまで以上に進む」とどの塾も認識している。少子化の進行スピードは各塾の対応以上に、速い。(少子化問題取材班=猫島一人)


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