少子社会の波紋〜揺れる地域から

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「学生服のまち」倉敷

岡山県と香川県を結ぶJR瀬戸大橋線の岡山県側最南端にある「児島駅」(倉敷市児島地区)。同地区は古くから足袋製造中心の繊維、縫製産業が有名で、近年は学生服、ジーンズ・カジュアルのまちとして名高い。この駅前に1996年4月、繊維産業振興支援のための第3セクター「倉敷ファッションセンター」がオープンした。「業界としても少子化による転換期で、ここが踏ん張りどころ」と息を荒くしている。

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学生服の縫製業者が立ち並ぶ一角に、全国シェア1位のメーカー「尾崎商事」(尾崎眞一郎社長、従業員3,240人)がある。1854年(安政元年)創業から144年の歴史。「カンコー学生服」で不動の地位を築いたが、現在、学生服からの脱皮を図るためさまざまな試行錯誤を繰り返している。

詰め襟、セーラーからブレザーへの移行、制服の自由化と何度となく波が荒れた。「(学生服メーカーにとって)限られたパイの食い合い。少子化で今後もパイが増えるとは思えない」。同社の岡村秀海総務課長が示す学生服の売上高は、数年前から横ばい、減少傾向が現れていた。それも近年のブランド化による高単価が売り上げ水準を何とか保っているのだ。

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管理棚には約8,000種類の生地が並ぶ。柄の多様化で少量生産による材料高が生じている

工場内の生地保管棚にはチェック柄など約8,000種類の生地が埋まっていた。詰め襟だけの製造では約100種類ほどで賄えたものが、ブランド化で種類が膨れ上がったというわけだ。「生地の購入は一巻(50メートル)と決まっていて、新入学生に使用しても三年間全然使わないものもある。明らかに材料高」と現場担当者は語る。

全国4主要工場、19衛星工場での生産ネットワークを持つ同社。学生服の衰退を受けて、企業ユニホーム、スポーツウエアといった多角戦略を次々に展開した。今、一番力を入れているのは芽室町発祥のゲートボール関連ウエアだ。「これからは教育、健康産業への進出も」と、さらに転換を強調する。

このように地域が学生服のまちからの脱却を模索する中、駅前のファッションセンターは業界の活性化を図る拠点として立ち上がった。運営主体の岡山県アパレル工業組合の小寺健吉事務局長は「基盤の学生服が衰退したことで、今後は繊維、縫製業全体の集積が求められる」と、センターの意義を話す。


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詰め襟、セーラー服の生産はブレザーに押されて先細り。最盛時とは打って変わって静かに箱詰めされる従来のセーラー服
昨年2月には県アパレル産地ビジョンを策定し、地元でデザイナー育成に力を入れるなど業界が一体となって取り組む方向性も示した。「だれも想像しなかった今日の事態」(同事務局長)に危機意識は強い。

また、倉敷市や経済界もこうした流れに敏感だ。「水島コンビナートに代表される重工業も厳しくなり衰退に歯止めを掛けるのにどの産業も必死。特に繊維業の再生をかける取り組みには支援していかなければ」と市商工産業課。倉敷商工会議所の石井泰博専務理事も「学生服で潤っていたまちが子供が減ることや工場の海外進出による人口減で、経済にも深刻な影響がある。今後は少量多品種の産地として活性化を図る必要がある。そのためにも経済界としてできる限り支援していく」という。

「学生服のまち」として名をはせ、国内の生産シェアが高かった地域だけに、今日の少子社会の流れは特に影響が強い。小寺事務局長の言う「想像もできない事態」は既に現実のものとなって押し寄せている。(少子化問題取材班=道下恵次)


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