少子社会の波紋〜揺れる地域から

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小学校空き教室[下]

昨年12月18日、学校とデイサービスセンターの“境界”にあるドアのかぎがセンター側から開けられた。子供たちは廊下をにぎやかに通って、お年寄りの待つフロアにはしゃぎながら向かった。


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子供たちがお年寄りの前で劇を演じる(横須賀市立粟田小学校にある粟田老人デイサービスセンターで)
横須賀市立粟田小学校の中で最も頻繁にセンターを訪れている3年1組の児童約30人はこの日、「サルカニ合戦」と「浦島太郎」をお年寄りの前で演じた。待ち兼ねていたお年寄りたちからは「かわいいねー」との声が漏れ、歌の場面では手拍子をしたり、一緒に口ずさんだりと楽しい時が流れた。

同校の北村勲校長は「子供たちの交流はセンターからの要請で昼休みに行うときと、(センターとクラス担任の)担当者同士が事前に話し合い、児童の道徳や特別活動の授業として訪問する場合がある」と説明する。

普段の個人的な交流はあまりない。それは学校側もセンター側も風邪などの病気の感染のほか、元気な子供たちと足が不自由なお年寄りたちが衝突し、けがをすることを心配するからだ。「訪問する場合には、学校側で養護教員が事前に訪れる子供が風邪を引いていないかなどをチェックし、病気の子はお年寄りに感染させるといけないので遠慮してもらっている。特にこれから冬場が正念場ですね」と北村校長は話す。

同校では、思わぬことも起こった。学校の避難訓練は同じ建物のため、センターと一緒に行った。素早く外に出た子供たちは、車いすやつえをついてゆっくりと外に避難するお年寄りを見て、跳びはねながら「早く、早く」と声を上げた。「うちの児童は約1割しか祖父母と同居していない。体が不自由なお年寄りを初めて見た子も多かったのではないか。いたわりの気持ちも生まれたと思っています」と北村校長。

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熱っぽく児童と高齢者との交流について語る真仁田美智子校長
一方、センターができて、地域のボランティアが活性化した。現在、50代の主婦を中心に約50人のメンバーがおり、交代でセンターを手伝っている。粟田老人デイサービスセンターの金井直子センター長は「ここは車いすのお年寄りも多く、外出などのときは職員だけでは大変。地元の主婦の助けがないと厳しい状況です。ボランティアで来る主婦も学校にあると気軽に足を運べるようですね。ここが地域の福祉を広めていく拠点になることを期待しています」と話す。

一方、音楽室がデイサービスセンターに転用された川越市立霞ケ関東小学校の真仁田美智子校長は「赴任した次の日がデイサービスセンターの開所式だったのには驚きましたね。でも、せっかくこのような施設があるのだから、これを生かさない手はないと思っています。特に初めて訪問する子供たちにはお年寄りと一言でもいいから話す、握手をしてくることの2点を義務付けています」という。しかし、「子供たちにお年寄りがただ弱く、いたわる対象だと思わせるだけではいけないと考えています。今後はお年寄りから何かを学び、互いにキャッチボールできることを考えていかなければ」と課題も指摘する。

また、老人憩いの家を校舎内に設けた同市の高階北小学校の金井塚友雄校長は「現在は学校の将棋クラブの児童がお年寄りと月に2回、将棋で交流しています。今後は社会科の授業で昔の地域の様子などの教育をお年寄りに行ってもらうことも考えています」と語る。

横須賀、川越両市の空き教室転用例は、少子化と高齢化社会を快適に生き抜くためのヒントが隠されているのかもしれない。(少子化問題取材班=竹村浩則)


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