WEB TOKACHI
十勝毎日新聞社
WEB TOKACHI
Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
[2008.10.12] >>> 目次ページに戻る
「何十年も続くうちに暴力が当たり前になっていた」と当時を振り返る田中さん
暴 力



殴られ続け…
当たり前のことに


 「ささいなことで怒鳴られ、殴られた。何十年も続くうちに、それが当たり前になっていた」

 十勝管内で一人で暮らす60歳代の田中照代さん(仮名)は、夫からの暴力(DV=ドメスティックバイオレンス)をそう振り返る。別居を決意したのは、子宮筋腫の手術をした2006年。退院後すぐ、傷跡目掛けてけられ、「もう無理」。サンダル姿で近くの長男の家に逃げ込んだ。

物投げつけられ突き飛ばされ
 道東地方で暮らしていた田中さんは、20歳の時に恋愛結婚し、長男と長女を授かった。しばらくして夫の暴力が始まった。食事が気に入らないとテーブルをひっくり返し、食器を投げつけた。突き飛ばされて足をねんざした。角材で頭を殴られ、血を流したこともある。

 タクシー運転手だった夫はきちんと働かず、ひと月の稼ぎが5万円だったことも。給料のほとんどはパチンコ代などに消えた。スーパーのレストランで働く田中さんの給料でやりくりする日々。家のローン返済が滞ることも。

 親や親類は「子供がいるなら離婚すべきではない」「女房が口答えするのが悪い」と考える世代。「自分さえ我慢すればと思っていた」

 いつでも逃げられるよう、財布や免許証、通帳などを入れたかばんをげた箱のすき間に隠し、普段着のまま寝るようになった。紙幣ではなく小銭を鉛筆立ての底などに隠して“貯金”。「四十数年で身に付けた防御策」だ。

 身を寄せた長男宅にも夫は押し掛けた。「迷惑をかけたくない」と警察署に相談、隠れ場所として選んだ十勝で、DV被害者保護の「駆け込みシェルターとかち」(佐藤アイ代表)の支援を得た。

見つかるかも…つきまとう不安
 今はアパートでの年金暮らし。「夫に見つかるのでは」。不安がつきまとい、見知らぬ車におびえた。外出時は帽子をかぶり、サングラスをかける。夫の了解を得られないだろうと、離婚の手続きは取っていない。

 十勝支庁環境生活課によると、50代以上のDV相談は年々増え、07年度は84件中25件と約3割に上った。同課は「長年配偶者から暴力を受けていた人が、法律や制度が整い、ようやく相談に来られるようになった」と指摘する。

 最近ようやく穏やかな日々を手に入れつつある田中さんは「良い人たちに巡り合い、ラッキーだった。同じ年代で自分のような経験をしている人は少なくないはず。『年だから』『恥ずかしい』とあきらめないで相談してほしい」と願っている。
(山下聡実)

>>> 目次ページに戻る
(C) TOKACHI MAINICHI NEWSPAPER >>> WEBTOKACHI トップ