WEB TOKACHI
十勝毎日新聞社
WEB TOKACHI
Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
[2008.07.27]
>>> 目次ページに戻る

年間キャンペーン前半を振り返る

 年間キャンペーン「生きる」は、第3部「自分探し」まで終わりました。読者の方から「記事を読んで(自分も)頑張らなきゃと思いました」など、たくさんの励ましの声を頂き、勇気づけられているところです。キャンペーンでは、生まれてから死ぬまでを「生(む)・育(てる)、成(る)、熟(す)、老(いる)、死(ぬ)」という5つのステージに分けて検証します。尊厳死、リストラ、育児…とさまざまな社会問題がある中、前向きに生きようとしている人を取り上げ、「生きる」ことを見直すのが狙いです。今後は、「熟(す)」「老(いる)」の順で連載していく予定です。
(年間キャンペーン取材班)

第1部
「最期をどう迎えるか」自問自答
 帯広市内の大野和枝さんは、自宅で介護する父親の穏やかな様子に触れ、尊厳死という“生き方”を選択したと教えてくれました。

希望する死に方尊重する社会
 自宅で最期を迎えたいと思う人は多いですが、現実は約8割が病院で亡くなっています。そんな中、心身の痛みを軽減する緩和ケアを広げる取り組みは全国で展開されています。もちろん、延命治療は否定されるものではありません。「本人が希望する死に方を尊重する社会であってほしい」という日本尊厳死協会関係者の言葉が印象的でした。

「尊厳死」を選び、自宅で父親を介護する大野和枝さん(昨年12月に撮影)
 「みとり介護」を導入している鹿追町の特別養護老人ホームでのことです。施設長に親の介護や死について「あなたならどうする」と問われた取材記者は、「恥ずかしながら目を泳がすしかなかった」といいます。

答え考えるきっかけに
 最低限必要な医療体制の下、介護施設で最期を迎える「みとり介護」。全国各地で広まりつつあるようです。掲載された記事が、研修会の教材として使われたこともあると聞きます。死に方に答えはありませんが、考えるきっかけになったとすれば幸いです。

 葬儀も大きく様変わりしています。自宅や家族専用の葬儀場を利用し、家族ら近親者だけで故人を送り出すケースが増えています。

 埋葬法や墓石ビジネスも変化しています。従来、墓には本人や家族の宗教観、死生観が深くかかわるものですが、少子化の影響などでこうしたスタンスは少しずつ変わってきています。

 最近では「散骨」という選択もあります。取材に応じてくれた女性は、晴れ晴れした表情で散骨を望む理由を語ってくれました。「死」を冷静に受け止めることで、人生が少し明るくなることを教えてもらった気がします。

第2部
充実した子育て環境まだ遠く
 かかりつけの産科がないため、大樹町に住む女性は不便と不安を感じていました。帯広市内・近郊在住者には無用の心配かもしれません。十勝管内でも医師不足に伴う医療格差が顕在化しつつあります。ただ、その女性はそうした不安を含め「出産の一部」と言い切りました。その強さには感心するばかりです。

少数派の声にも耳を傾ける
 出産にまつわる現象の一つとして、あえて「流産」も取り上げました。少数派だからこその貴重な声に耳を傾けたかったのです。

「子供がいたら」「いなくても」。マグカップを手に将来を真剣に語り合う夫婦(4月に撮影)
 取材記者は、出産や流産の経験はありません。流産の多くは、胎児側に原因があるそうです。しかし、話を聞かせてもらった女性2人は「何がいけなかったのか」と自分を責め、何年も胸のつかえが取れなかったといいます。

 つらく悲しい体験を思い出させる取材にもかかわらず親切に答えていただき、感謝しています。こうした方の協力があってこその記事でした。

少子化解決には企業努力も必要
 子育ては今や、個人の問題ではありません。島根県にある塗装業の中小企業では、30分単位の休暇や保育料助成など、できることから制度化していました。若手社員の定着につながり、社内の雰囲気も和やかになったといいます。

 若年層が定着しないとこぼす中小企業は多いですが、終身雇用の概念が薄れてきたことだけが理由ではないように思います。社員が安心して暮らせる環境をどう築くか。企業側の努力が、核家族化や少子化がもたらす課題解決の一歩になると感じました。

 結婚前は2人だけの生活を楽しみにしていたのですが、年月がたつにつれ「子供がいればもっと幸せ?」と思い始めたカップルもいます。愛の形はさまざまで、変化することもあります。夫婦だけの世帯は、今の社会では決して珍しい形態ではありません。

第3部
生き方の正答、人それぞれ
 「体は女性で心は男性」という札幌の菊池光さん(36)=仮名=に会うのは、十数年ぶりでした。性同一性障害がもたらす苦労は、思いも寄らないものばかり。「トイレはいつも男子便所の『大』の方」というのは一例です。

性同一性障害の本質に気付く
 取材終盤「そうまでして男性になりたいんだ」ともらすと、「なりたいんではないんです。男性なんです」と菊池さん。この時になってようやくこの障害の本質に気付いたような気がします。

第3部で取り上げた障害者の就労問題。帯広市内の共同作業所では、一般就労を希望しながらかなわない知的障害者が少なくない(6月に撮影)
 手あかのついた常識を見直すためにも時折、菊池さんに会って話を聞かせてもらいたいと思っています。

 「結婚」は男女を問わず、その後の人生の大きな分岐点になります。結婚しない女性は増え続け、晩婚化も進んでいるようです。それだけに結婚の決め手や、結婚生活を続けている理由に関心が向きます。とはいえ、友人、知人の結婚観、経験談はさまざまで、ワンピース足りないパズルを解く錯覚に陥ります。

 「一緒にいて幸せ」と言い切る夫婦もいれば、両家の価値観の違いから「最も近い他人」ともらす夫婦も。みな「信頼」「納得」といった言葉を用いながら、一つではない答えを導き出そうとしているように感じました。

読者からの便り記者の励みに
 読者からのお便りの一部を紹介します。「心の病で数カ月仕事をしていず、家にいます。再び社会に出るのが怖かったり、もう少し時間がかかるのではないかと思っています。少しずつ外に目を向けられるよう、努力しているつもりです」(20代女性)、「この連載を知り、『人と比べる必要なんかない、自分の今の力なりに精いっぱいやろう』と思えるようになり、窮屈な世の中ながらしっかりとやっていこうと思えるようになりました」
(日高管内の男性教員)。

第1部から第3部ダイジェスト
(全10回)
 誰にでも訪れる人生の締めくくり「死」。時代とともに死生観も変化してきた。今はどう受け止められているのかを探った。

 看護師として多くの死と向き合ってきた女性は「最後まで自分らしく生きたい」と尊厳死を選択し、意思カードを手にした。父親も自宅でみとることを決めた。

 がんやエイズの末期患者で、治癒が困難な人の終末期医療を行うホスピス(緩和ケア病棟)。札幌の病院の現場をルポ。心身の苦痛の緩和・軽減に主眼を置く。この病院の医師は「『みとり』は、医療だけでなく福祉などさまざまな面でのケアが欠かせない。地域のネットワーク構築が必要」と強調した。

 葬儀の形も変わってきた。「最後まで心を込め温かく送り出したい」と故人が友人らと楽しく過ごした自宅の洋間で葬儀を行った。近親者だけでの葬儀も増えている。
(全7回)
 少子化が進む。経済的理由や人生観から、あえて子供をもうけない夫婦もいる。価値観が多様化する現代で、出産や子育ての現状を取材した。

 医療技術が進歩した今の社会でも、管内の町村に住みながら出産するには、大きなリスクが伴う。病院まで片道60キロの町に住み、出産を控えた女性は「何かあったら間に合うだろうか」と不安を抱えながらわが子を抱く日を待ち望んでいた。

 管内の中絶の現状に目を向けた。年々減少傾向にあるが、2006年度は、876件。1日当たり2.4人の計算になる。当事者も医療現場の人たちも苦渋の選択をしている。

 また、結婚当初「2人だけの生活を楽しみたい」と考えていた30代の夫婦は、徐々に心境が変化。「子供がいたら」。不妊治療を始めたが時間がたつにつれ心身、経済的な負担に。結婚してよかったとの思いは2人とも変わらない。子供がいる方がもっと幸せなのか。胸中にさざ波が立つこともあるが、二人三脚で歩みを進める。
(全10回)
 学業を終えて就職。しかし「本当にそれでいいのだろうか」と悩む若者がいた。仕事に就きたくても、採用されずに頭をかかえる若者もいた。

 就職活動に汗を流し、大学を卒業したら社会人に。「当たり前」のレールに乗りたくなかったという20代の女性は、夢を求めてアフリカへ。学校に通えない子供のための私塾と里親制度を運営するNGOを設立させ、ボランティア活動を続ける。

 性同一性障害の人の思いも伝えた。女性の体に男性の心が宿る札幌の30代の人は「普通に穏やかに暮らしたいだけ」。しかし、戸籍をはじめとする社会の仕組みは、簡単に受け入れてくれない。

 病気で休学して大学卒業が遅れた27歳の男性。履歴書を手に10社ほど受験したが門前払い。企業や社会は「回り道」を許す余裕がなくなりつつある。


>>> 目次ページに戻る
(C) TOKACHI MAINICHI NEWSPAPER >>> WEBTOKACHI トップ