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十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
[2008.06.30] >>> 目次ページに戻る
「妻と子供と力を合わせ、未来を切り開きたい」と語る小林さん
就 農



進路に無頓着…
26歳「将来考えないと」

家族でき道定まる「後悔ない」

 「まさか酪農の道に進むとは思ってもいなかった。まだ手探りの状態だが、希望に燃えています」。昨年11月に大樹町中島地区で新規就農した小林孝行さん(33)は目を輝かせる。転職を繰り返した末に手に入れた“居場所”だ。

 上士幌町生まれ。音更高校を卒業後、印刷工や警備員、作業員などとして働いてきた。「高校時代、進路には無頓着だった。ましてや人生なんて考えもしなかった」。職を変えることにもためらいはなかった。「仕事は遊ぶお金を稼ぐため、という感覚だった」と振り返る。

 26歳の時、派遣社員として関東の自動車工場で勤務。求人の募集条件が厳しくなり、思うように就職できなくなったと感じ始めた。「そろそろ真剣に将来を考えないと」−。

性に合った仕事初めて実感
 音更の実家に戻って就職活動を始めたが、何かをしたいわけでもない。もどかしさを募らせる中、ハローワーク帯広(帯広公共職業安定所)でふと酪農関係の求人票が目に入る。大きな期待を抱かずに士幌で実習生として働き始めた。「家族と力を合わせて未来を切り開いていける点が何より魅力。もともと動物が好きで、牛がかわいかったし、命を扱うことで自分も生きていると思えた」。体を使う仕事も性に合ったし、「きつい、厳しい」とのイメージとも違ったという。初めて「自分に向いた仕事」と実感した。

夫の思いを尊重妻が後押し
 牧場を持ちたいと2002年に大樹に移住。当時交際していた妻加奈さん(34)は「初期投資の金額が大きくて不安だったが、挑戦したいという思いを尊重した」と後押し。2つの牧場で5年間の修業に励んで独立。中島地区の酪農家数戸で自家飼料の生産・管理などを共同で行う組織の一員にも加わった。

 ただ、酪農を取り巻く最近の情勢には、希望と同じぐらいの大きさの不安を覚える。飼料の値上がりや原油高騰による資材の値上げなど心配事は尽きない。「暗中模索。立ち上げて1年も経過していないので、収支のバランスが取れているのかさえ分からない。酪農は世界情勢や政府の政策によって左右される。手の届かないところで命運を握られているようで漠然とした怖さを感じる」と話す。

 「でもね」と加奈さんと長男光希ちゃん(2)に目をやりながら言葉を続ける。「今は守るべき家族がいるので充実している。進むべき道も定まった。後悔は全くしていない」。回り道を経てつかんだ、ささやかな幸せをかみしめる毎日だ。
(北雅貴)
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