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十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
[2008.04.09] >>> 目次ページに戻る
3. 中 絶



どちらを守ればいいの?…
「誰もが苦渋の選択」

上出静子さん
 「中絶を選ぶ理由は千差万別。善悪の問題でも第三者が立ち入れる問題でもない。言えるのは、当事者の誰もが心から喜んで選択したわけではないということ」。芽室町で妊婦、育児のカウンセリング事務所マミー・愛を主宰する上出静子さん(59)は話す。

 数年前、パートナーの反対で出産を断念した女性の相談を受けた。今でも時折見かける彼女の表情にはどこか暗さを感じる。

1日に2.4件
 十勝保健福祉事務所によると、2006年度の管内の出生数は2907人。人工妊娠中絶件数は年々減少傾向にあるが、876件を数える。単純計算すると1日当たり2.4件になる。

 母体保護法は、暴行などで妊娠した場合と、身体的・経済的理由で妊娠の継続が母体に著しい害を及ぼす時だけに中絶を認めている。実際には、浮気や避妊の失敗、3子目、4子目で養育が困難−などが理由になるケースも多い。こうした場合も「経済的理由で妊娠継続困難」という名目で合法的に施術されるのが現実だ。

中絶手術用具
 中絶手術では、子宮内に鉗子(かんし)を入れ、手の感触だけを頼りに内容物をかき出す。子宮に穴を空けてしまうなどのリスクもあり、術後に不妊などの後遺症が出る恐れもある。

 管内産科医の1人は「母体への影響を考えれば中絶は避けたい」と打ち明け、「保護法をしゃくし定規に守れば件数は間違いなく激減する」と法律と現実の間のギャップを指摘する。

無限の可能性
 上出さんは1000人以上の出産に立ち会ってきた。「中絶が頭をよぎった時には、おなかの子に無限の可能性があることを思い出して」。出産の喜びを知る1人として強く願う。

 だが、医療関係者の1人は「胎児は救えないが、依頼者の生活は守ることができる。望まれずに生まれた子の養育環境を考えれば…」と言い、「誰も当事者になりうる問題」と提起する。

 守られるべきは命か生活か。解答のない問いは、毎日のようにひっそりと繰り返されている。所得格差の拡大とともに、中絶はより身近な問題となる可能性もある。
(長田純一)

(題字は長沼透石氏)

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