WEB TOKACHI
十勝毎日新聞社
WEB TOKACHI
Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
[2008.04.08] >>> 目次ページに戻る
愛おしそうに子供を抱き上げる母親。こんな日を夢見ながらも、10人に1、2人はかなわない…(写真と本文は関係ありません)
2. 流 産



あふれ、止まらぬ涙…
心身の回復 助けが必要

 「母体の影響ではなく遺伝子の問題と医師に言われたけれど、『何が悪かったの?』という思いはぬぐえなかった」。十勝管内在住の中山香織さん(37)=仮名=は2年前の流産を振り返る。

1年に2度
 不妊治療を5年ほど続け、待望の第1子を授かった。しかし2カ月目に流産。半年後に再び授かった子は、健診で心拍停止が判明した。結婚10年目の出来事だった。

 「流産はテレビの中の話だと思っていた」。1年間に2度も流産するとは想像もしなかった。妊娠の喜びをかみしめる間もなく、残ったのは悲しみだけ。「大丈夫。受け止められる」と思っていたが、「だめだった」と周囲に流産を伝えた時、あふれる涙が止まらなかった。

 胎児の奇形により、妊娠中期に30代で中絶を経験した池田智美さん=仮名。子宮の中を掻(か)き出す手術では心も体も痛んだ。「お願いだからおなかに戻して」。当時3歳だった長男の無邪気な言葉に返す言葉が見つからない。あげる相手がいないのに、乳房が張る。心身ともに不安定な状態がしばらく続いた。

 あれから十数年。「きちんと泣いて『つらい』と言いながら、自分の気持ちに折り合いをつけていった」。だからこそ、病院でも友人でも、本人や家族の“その後”を心身両面でケアできる環境が必要だと強く感じる。

北澤院長
 帯広レディースクリニックの北澤克彦院長(50)は「流産は妊娠の15%、10人に1、2人の頻度で起こる。1度流産したからといって繰り返しやすくなるということもない」と話す。多くの場合、母体ではなく、染色体異常など胎児側に原因があるという。とはいえ「妊婦の心身のショックは大きい。自分のせいではないと徐々に心を回復させていくしかない」と語る。

最後まで不安
 中山さんは最後の不妊治療にしようと決めた昨年春、子供を授かった。流産の不安は出産時までつきまとった。トイレではいつも出血を気にし、健診のたびに「心拍が止まっていたら」と気持ちが落ち着かなかった。安定期に入るまで妊娠を周囲に伝えられなかった。

 無事出産して2カ月。「できれば流産は経験したくない。でも、人の優しさを知ることができた。1人目、2人目がなければこの子にも出会えなかった」。あの経験も今の自分の一部だと感じている。
(山下聡実)

(題字は長沼透石氏)

「生きる」へのご意見・ご感想がありましたら、取材班までEメール(ikiru@kachimai.co.jp)またはファクス(0155・25・2700)でお願いします。


>>> 目次ページに戻る
(C) TOKACHI MAINICHI NEWSPAPER >>> WEBTOKACHI トップ