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十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
[2008.01.13] >>> 目次ページに戻る
家族葬専用葬祭場「和」で行われた通夜。親族やごく親しい友人ら約20人が参列し、しめやかに営まれた
9. 家族葬(下)



変化している死生観
葬儀形態も多様化
自由に語る時代

 「近親者だけの葬儀が増えてきた。うちでも月に2、3回はある」
 十勝管内最大手の葬儀社「帯広公益社」(帯広市大通南8)の渡邉聡常務によると、この4、5年で葬儀の形態は大きく変化した。町内会が積極的に手伝ったかつての図式は崩れ、業者主体のケースが増加。家族葬となれば町内会が加わらないこともある。この流れは年々加速しているという。

最後の時穏やかに
 葬儀社の和晃(同市西20南3)は2007年8月、管内初の家族葬専用葬祭場「和(のどか)」をオープンさせた。民宿をイメージした木造の平屋で、延べ床面積は約180平方メートル。葬儀が行われる部屋は約115平方メートルで、50人ほど収容できる。浴室もあり、宿泊も可能だ。「最後の時を家族や親せきでのんびり過ごしてもらいたい」と阿部公夫社長。

 同社は、会葬者が年々減り、家族葬などの小規模葬儀を望む客が増えたことから建設を決めた。コンビニエンスストアの跡地を家族葬向け斎場に改修した旭川市内での取り組みがヒントになった。これまでに20件余りの利用があり、「亡くなったらここでという見学者も多い」という。

 「故人らしさ」を求める葬儀も増えている。生前の故人の映像を編集し、ビデオ上映される葬儀もある。山好きの人が山をイメージして花を飾ったり、酒好きな人が酒を並べたりして祭壇を作るサービスも好評という。

変質する慣習
 帯広公益社の羽田野知昭総務部長は「生前に葬儀の予約をする人も増えている」と話す。元気なうちに会場や祭壇などを自ら決め、遺影、戒名を用意する。「子供たちをはじめ遺族に迷惑をかけたくないという思いが背景にあるのでは」

 葬儀は宗教的な儀式で、伝統や一定のルールにのっとって執り行われる。しかし、形態の変化により、引き継がれてきた習慣も変質しつつある。業界関係者は「経済的事情」や「人間関係の希薄化」を背景に挙げる。

 和晃の阿部社長は言う。「葬儀は『選べなかった時代』から『選べる時代』になった。葬儀形態は20年前と10年前ではあまり変わらないが、10年前と今ではまったく違う。これからもどんどん変化していくのでは」。帯広公益社の渡邉常務は「少しずつ死について考える時代になってきた」と死生観の変化を実感している。

 家族同士、自由に葬儀について語り合うなど、「死」をタブー視しない時代がすぐそこまでやって来ている。
(吉良敦)

(題字は長沼透石氏)


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