WEB TOKACHI
十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
[2008.01.07] >>> 目次ページに戻る
趣味の絵画を楽しむひと息の村利用者と笑顔の職員(写真下)と在宅ホスピスに取り組む矢津医師(同右上)
4. コミュニティ・ケア(上)



患者の「日常」を守る
医療と福祉、地域
手を携えて

 「その人の生活を守りながら医療を提供するには在宅が適している。病院や在宅、医療や福祉が連携し、いろいろな選択肢を用意することが大切。末期状態で、家に帰りたいのに帰れない現実は悲しい」

 福岡県行橋(ゆくはし)市で在宅ホスピスに取り組む矢津内科消化器科クリニックの矢津剛医師(49)は語る。自宅での生活を望みながら、医療面の不安や家族の負担を気にしてためらう患者が少なくなかった。そこで2006年5月、全国でも珍しい在宅ホスピス支援施設「ひと息の村」を開設した。

飲酒や喫煙自由
 敷地面積約1990平方メートルで、建物は3階建て。訪問看護やヘルパーステーション、療養通所サービス(デイホスピス)などの在宅ケア資源がそろう。2階には終末期患者ら向けの賃貸住宅11室を用意。介護職員が24時間常駐するほか、主治医の訪問診療や在宅時の介護サービスが継続でき、環境変化は最小限にとどめられる。がんとエイズに限定したホスピスと異なり、神経難病患者らも利用できる。

 開放的な造りで、利用者は訪れた家族や職員らと談笑する。入院では制限される飲酒や喫煙も自由。地域のシンボル的なカルスト台地「平尾台」も一望でき、普段の生活が送れる。

 退院後の在宅医療を円滑に進めるための準備や、家族の介護負担軽減などの目的で、月単位から2泊3日の短期まで、利用期間は柔軟に設定。在宅ホスピスを行う患者や家族がひと息つける場所を目指している。開村1年半で延べ利用者は72人に上り、約20人が施設で息を引き取った。

共同体でみとり
 「誰もが経験する、人生の中でも最も価値のある有意義な時間」。矢津医師は終末期をそう表現する。そのためには、それぞれの生活の質をコミュニティー(地域)ではぐくむケアの創造が必要と説く。

 子供が小学校に通う姿を見届けるため、大腸がんに侵された30代の女性は帰宅。腹水を抜きながらの壮絶な緩和ケアが1カ月続いた。最後まで母親の役割を果たし、自分の存在意義にかかわる心の痛みが軽減されたように感じたという。日常性の継続や関係性の維持、そして本人の意思の尊重。在宅ホスピスが担う役割かもしれない。

 「昔のように社会の中で死を見詰めるべきでは」と矢津医師。核家族化の進展に伴い、独居や老老介護を強いられる高齢者世帯の増加は必至。どんな人でも最後まで住み慣れた地域で過ごせるよう、共同体でのみとり文化の再生を−。そんな“コミュニティ・ケア”の思想が息づいている。
(池谷智仁)

(題字は長沼透石氏)


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