WEB TOKACHI
十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
[2008.01.06] >>> 目次ページに戻る
病棟内のあちこちで見られるボランティア手作りの展示物。ホスピスはボランティアにも支えられている(札幌南青洲病院)
3. ホスピス



最期をどう迎えるか
患者の選択の権利
それに応える

 病室前の広々としたじゅうたん敷きの廊下の先にある談話室。書棚や熱帯魚の水槽があり、家族らはリラックスして会話できる。医療機器の音、薬剤のにおいという病院特有の雰囲気は感じられない。病室から出てきた女性が室内犬を抱いている。患者にとって大切な“家族の一員”だ。「顔を見せると喜ぶから」と女性はほほ笑んだ。

「日常」をつくる
リラックスして家族と会える談話室
 札幌南青洲病院(札幌市清田区、前野宏院長)のホスピス(緩和ケア病棟)。全18床は40−90代の患者で埋まり、待機者もいる。平均入院日数は約1カ月。ホスピスでは、治癒が困難ながんとエイズの末期患者を対象に終末期医療を行う。心身の苦痛の緩和・軽減に主眼を置く。同病院が重視するのは「日常」だ。病棟内の施設はいつでも使え、24時間面会可能。ペット同伴も認められている。

 ホスピス開設は2003年12月。前野院長(53)は「近代医療は科学を武器にした病気や死との闘い。結果的に過度な延命措置など医療のごう慢を生み出したのでは」と語り、「死はすべての人に平等にやって来る。死を迎える患者の権利に応えたい」。

 スタッフは看護師16人と医師4人。一般病棟より多い。病状の変化や患者の意向にきめ細かく応じるためだ。小野寺由香看護師長(43)はホスピスでの勤務は通算8年。がんのため一般病棟に入院していたある男性との出会いが転機となった。

 男性は当初、明るく、どんな治療にも前向きだった。しかし、治癒の見込みがないと分かると、看護師らに背を向け、声を掛けても答えなくなった。「ホスピスに行きたかった」。亡くなる前に漏らした男性の一言が、ホスピスケアに向かわせた。

 数カ月以内に決まって「別れ」が訪れる。回復に手を貸す役割でないことに「つらい」と離れたスタッフもいる。「最後までその人らしく過ごせる場があってもいいと思う」と小野寺さん。「ありがとう」「先に逝って待ってるね」。患者からの感謝の言葉や穏やかな表情に触れ、自らの存在意義を確かめる。

ネットワーク必要
前野院長
 道内のホスピスは同病院を含めて10カ所。道東や道北にはない。札幌ホスピス緩和ネットワーク代表で十勝緩和医療研究会顧問でもある前野院長は「浸透はしているが、ホスピスがユートピアとか、単なる死に場所という誤解もある」と現状を指摘する。

 医学の進歩で苦痛除去の技術も進化し、ホスピスと緩和ケアは分離された。治療・回復という展望が開けない現場スタッフの苦悩は絶えることがない。前野院長は「大切なのは患者や家族が選択できる環境」と強調。「『みとり』には医療だけでなく、福祉などさまざまな面からのケアが欠かせない。地域でのネットワーク構築が必要」と訴える。
(原山知寿子)

(題字は長沼透石氏)


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