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十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
[2008.01.05] >>> 目次ページに戻る
夫が愛用したアーチェリー道具を手にする川瀬さん。終末期の夫と過ごした経験が尊厳死への関心を高めた(山下僚撮影)
2. 尊厳死 (下)



意思をカードに込め
つむいできた人生
文章に残す

 「残った人に迷惑はかけたくない。最期はどうしたらいいのか、準備を進めています」

 2000年5月に夫を病院でみとった川瀬香子さん(72)=帯広市在住。子供もなく、1人暮らしを続ける中、自分の死について考えるようになった。夫の生きざまも影響し、日本尊厳死協会(本部東京)への登録を考えている。

自分ならどうする
 夫・光政さん(享年62歳)は肺気腫を患い、酸素吸入器を使っても体のだるさを訴え続けた。それでも帯広三条高校アーチェリー部の顧問として全国大会に生徒を引率するなど、行動的な毎日を過ごした。

 死を迎えるまでの5カ月間、市内の病院に入院。一度だけ「家に帰りたい」と口にした。酸素を送り込む管は太くなり、外出は困難だった。最後の願いはかなえられず、その1週間後、家族に見守られて穏やかに眠りについた。「最期の瞬間を察知したのでしょう。好きなことをやり、太く生きた人でした。心おきなくみとることができた」。川瀬さんは振り返る。

 「1日でも長く生きてほしい。治るなら何とかしてほしい。でも、苦しむ姿は見たくない。本人らしく息を引き取れるよう医師にお願いした」。複雑な思いが頭を巡ったが、延命治療は選ばなかった。「自分ならどうするのか」−。夫の終末期に立ち会い、その思いにかき立てられた。

 「私は1人なので、自宅で最期を迎えるのは無理。静かに息を引き取りたいという意思を伝えるには、(同協会の)カードを身に付けるのが安心かな」。好きな和服に合う帯締めを手作りするなど、前向きに生きる日々だ。夫の遺品に囲まれた自宅には、自身の人生をつづった文章を整理して置いてある。「残った人に少しでも自分を理解してほしいから」−。

生きる意欲増す
「生きる意欲が増したよ」と話す菅原会長
 「尊厳死は長く生きることを否定しているのではない。精いっぱい生きて、安らかな死を迎えようとしているだけ」

 浦幌町にある「尊厳死協会 北海道ひまわり会」の菅原薫会長(83)=同町厚内在住=は語る。同会は1992年、日本尊厳死協会を参考に発足。浦幌を中心に会員は当初の4倍近い約180人に達している。

 心臓病のためペースメーカーを装着しながら海釣りや山菜採り、牛の世話などを楽しむ。「人生最後の意思を示したことで、生きる意欲が増したようだ」。菅原会長の晴れ晴れしい表情が、充実した日々を物語る。
(池谷智仁、北雅貴)

(題字は長沼透石氏)


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