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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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[2007.12.19]
年間キャンペーン最終部「十勝で見る夢」番外編


 十勝が地域間競争に勝ち残るための戦略を模索し、提案してきた、2007 年間キャンペーン「まちの力」。最終の第5部は、取材班で探し出した「十勝に今ある可能性」について、少しの夢を載せて6回紹介した。座談会では、今回の内容を振り返るとともに、1年間の取材を通じて感じた“十勝の力”とその生かし方について話し合った。
(小林祐己、清水生、丸山一樹、植木康則、広田実、安福晋一郎、安田義教、松村智裕、桜庭弘子)

その1 「あるもの」を探せ 可能性秘めた“芽”豊富に

 植木 今年のキャンペーンで見つけた、地域発展の重要なキーワード「あるもの探し」。最終部は十勝で探すことがテーマだった。

 小林 「大樹から宇宙旅行」では、取材を通して大樹に大学や研究機関のロケット打ち上げ場ができるのも夢じゃないと感じた。帯広より先に大学誘致ができるかもしれない。

 松村 世界中からお金持ちが集まり、大学や研究機関ができれば、将来、十勝の中心は帯広から大樹に移ることもあり得る。

 清水 軽油代替燃料のBTL(バイオマストゥリキッド)は面白い。ディーゼル車が日本で普及すれば、BTLが果たす役割は大きい。BDF(バイオディーゼル燃料)なども含め、新エネルギー分野で十勝が今取り組んでいることにも大きな意味がある。

 丸山 十勝産の菓子原料は、道外で特に評価が高いことに驚いた。そして外の人ほど「十勝」の名前を効果的に使ってPRし、浸透させていると感じた。

 安田 グリーンツーリズムは、環境と人の気質で、十勝に可能性があるとの意見があった。道央の長沼町(空知管内)では農家での宿泊を売りにして、多くの修学旅行生が訪れている。農業体験はニーズがあり、十勝は小単位の客の受け入れを専門家が勧めていた。

 松村 本州の人たちは農作業のほか、農産物の選果場を見たいのだという。地元に住む側としては意外だが、産業観光のニーズが出始めている。農業・農村風景という「あるもの」を体系的に観光に生かす検討が今、必要だ。

 丸山 牧草ロールはインパクトがある。できれば透明で中が見られるといい。豆のにお積みも新鮮。ただ、上部が青のシートではない方が、風景としては美しいと思う。

 安福 十勝は日常に観光資源がある。それと有力なイベントを含む食。これら「あるもの」を戦略的に結びつけることで“外貨”を獲得できる。

その2 「イメージ」大事に ブランド化で都会にPR

 植木 「あるもの」に、より磨きをかけるためには。

 広田 イベント盛りだくさんの十勝は、魅力的な催しの発信の仕方と、それぞれの連携がカギだと感じた。

 小林 例えば「そばまつり」は新得、鹿追、芽室、幕別で開催し、どこも混雑している。十勝のソバの質や、各町の味の違いを、日程なども含め連携して管内外にアピールすれば、そば愛好家が各イベントを周遊すると思う。

 安田 最高といわれる地場の素材を、簡単に味わえる場所が必要。JR帯広駅前に常設でジャガイモやトウモロコシを食べられる場所がほしい。トウモロコシや揚げイモは、札幌ではなく十勝がおいしい、と。

 植木 大分県別府市は、駅前に温泉がわき出ている場所をつくり「温泉地・別府」をアピールしている。ある経済人は「例えば帯広駅前で牛を飼って牛乳を飲ませるとか、平原通の花壇にトウモロコシを植えるなど、十勝PRの仕方はいろいろある」といっていた。

 安福 東京の高級食材を扱うスーパーでは、「十勝産」が「北海道産」と表記されることが多いという。変な話だが、十勝より北海道の方が有名で、十勝産のイメージが確立していない。

 小林 十勝全体でブランド化を図り、少しでも高く売っていきたいところ。十勝ブランドの認証を管内でもやっているが、申請されたものをどれもこれも認証しては、逆に価値をなくす。しかも認証団体や名称が複数あって、連携していない。

 清水 ある金融機関は、官公庁では総花的になるので、民間機構が吟味してブランド認証すべきだといっている。イメージとしては「ミシュラン十勝」か。その絞った数点を、限られた資金を使って、売り込みたい場所に向かって宣伝すべきだ。今こそ「選択と集中」だろう。

その3 危機感を持て 「困ってから」だと脱出不可能

 丸山 発展のもう1つのキーワードは「危機からの脱出」だった。ただ取材で回る十勝は「このままじゃいけない」という危機意識があまり感じられない。

 安福 十勝の場合、本当に今は困っていないのだろう。ただ、夕張取材で実感したが、本当に困ってからだと体力が無くて脱出できなくなる。余力のあるうちに対策を取っておく必要がある。

 小林 識者から、十勝が変わるには、地元で力のある農協の変化が必要との声があった。農協が生産だけでなく、観光などに目を向けて新たな取り組みにかじを切ることで、目に見えて変わるのでは。

 安田 第1部で紹介した福島県矢祭町の地元商店街スタンプ券で税や公共料金を支払う取り組みは、これから上士幌と芽室が導入する。自立への小さな変化だ。ただ、自分のまちに当てはめた戦略がなく、外枠だけ模倣してしまうとうまくいかない。ぜひ成功例になってほしい。

 清水 道東道の清水−トマム間が開通して以降、トマムの店がにぎわっている。清水町を走る車の量が減った気がするし、影響を感じる。

 植木 2011年に十勝清水−夕張間が全面開通すれば、札幌圏へのストロー現象とともに、十勝そのものが通過点となる恐れがある。まさに“今そこにある危機”。何とかそれまでに十勝を印象づけて、高速から降りる動機を与えておかないと。タイムリミットは2、3年だ。

その4 戦略を描け 地元の良さ再発見を

 植木 十勝の力を生かし、地域間競争に勝ち残る戦略は。

 松村 地元の良さを見直すこと。十勝の人にとっては当たり前のことが、本州の人には全然知られていない場合もある。地元住民が十勝を知り、他者にとっての「十勝」をしっかり把握する必要がある。

 丸山 「十勝こそ北海道」ならいいが、北海道の中に埋没傾向。意識した十勝のアピールが必要。その点でお菓子をきっかけとした「食と観光」は、十勝発展の武器になると思う。

 安福 その武器をどこに向けてアピールするか明確にすることも大切。道央か首都圏か台湾か。年齢層はどこに絞るのか。試食を配って予算を使うだけの中途半端なPRで終わらせず、十勝全体の共通戦略としてビジョンと対象をはっきりさせておくとよい。

 小林 帯広とそれ以外の町村では何か隔たりを感じる。やはり十勝の母都市・帯広がリーダーシップを取って、例えば十勝のその時々の旬の食材や関連イベントを紹介・発信するような「十勝の展示場」の役割を担ってほしい。

 安田 人づくり、人を生かす環境づくりが欠かせない。競争意識を持ち、他地域より十勝が優れている面を打ち出したい。良い素材は確実にあるのだから。

 植木 人口減の時代。交流人口を求め、外貨獲得を目指した地域間競争はますます激しくなる。どれだけ早く十勝が連携体制を整え、戦略的に打って出られるかが分かれ目。生き残り戦略を練る際に、この年間キャンペーンでの提言が、少しでも十勝の役に立つことを願いたい。

大樹から宇宙旅行
 NPO法人「北海道宇宙科学技術創成センター」(札幌)は米国企業と共同で、有人宇宙船「ロケットプレーンXP」による日本発の宇宙旅行計画を構想する。出発地は大樹町。“宇宙基地”としての地理的優位性に優れた大樹、研究・技術力を高める十勝は、来るべき宇宙時代に発展の可能性を十分に秘めている。

エネルギー王国
 各種バイオ燃料に関する研究・開発が各地で進む中、慶應義塾大学大学院の金谷年展教授は次世代バイオ燃料として、原料を選ばない軽油代替燃料「BTL」(バイオマストゥリキッド)を推奨する。管内の先駆的な取り組みを素地とし、豊富な資源量を背景にした世界的なバイオ燃料基地・十勝の可能性は大きい。

スイーツランド
 迫る道東道全線開通により懸念される札幌圏への消費流出阻止へ、菓子業界は手を携える。管内菓子店をスタンプラリーで楽しむ企画や、地場素材の活用を推進し「お菓子を食べに十勝へ」のイメージ定着を狙う。識者や道外の職人も十勝の素材に太鼓判。「菓子王国で十勝繁栄」の夢を見たい。

イベント万歳!
 収穫祭、夏祭り、ばんえい競馬…十勝は季節ごと、地域ごとに特色ある催しが目白押しの「イベント王国」。マンネリを打破し、集客数を競いがちな「20世紀型発想」からの脱却のため、開催目的を見直し、対象者を絞り、情報発信を強化して、複数イベントを戦略的に結び付けたい。

高級店へ出荷せよ
 首都圏の高級食材スーパーに十勝産食材が並び、十勝には魚介類などブランド化の可能性を秘めた食材が眠る。十勝産を売り込むには、イメージ戦略と高付加価値化が不可欠。識者は、一流の素材に加え、農産物の健康機能性を根拠付ければ市場に一層売り込めると見る。

グリーンツーリズム
 「一番北海道らしい景色」と称される十勝は、札幌圏をはじめ全国都市住民の「心のふるさと」にならないだろうか。農村でゆっくりと過ごすグリーンツーリズムは、交流人口の増加や、農業現場を知ってもらうためにも可能性ある分野。担い手のすそ野を広げ、十勝という「面」でのPRが欠かせない。

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 十勝毎日新聞社の年間キャンペーン取材班では、読者のみなさまからの意見を募集しています。記事を読んだ感想や、次回展開予定の「十勝の可能性」への提言など、何でも結構です。ぜひEメール(machi@kachimai.co.jp)でお寄せください。

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