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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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[2007.11.15]
年間キャンペーン第4部「夕張に学べ」番外編
教訓生かし「自立の力つける時」



 自治体の生き残り戦略を考える、2007年の年間キャンペーン「まちの力」。第4部は財政再建団体入りした夕張市を取り上げ、6日に藤倉肇夕張市長インタビュー、7−10日で「夕張に学べ−自治の責任」全4回を掲載した。「力を失ったまち」に滞在して取材した6人を含む担当記者9人で、取材を通じて感じた市民の様子や十勝の自治体に生かすべき教訓などを話し合った。
(安田義教、丸山一樹、松村智裕、清水生、広田実、安福晋一郎、桜庭弘子、小林祐己、植木康則)

その1 記者の見た夕張 過去と向き合う姿勢感じられず

 植木 実際に現地で感じた夕張市民の反応は?

 丸山 接した市職員からは何も伝わってこなかった。あきらめているのか、少なくとも再生への情熱を個々で持っているようには思えなかった。

 広田 普段取材している町と比べ「夕張は、市民が主体的にまちづくりにかかわるべきことにようやく気付いた」という感じだ。

 清水 ホテルマウントレースイ、サッカー場の芝など街並みに似合わないほど立派なものがいくつもあり、際立っていた。

 松村 ただ、破綻を「故・中田鉄治市長の責任」とする市民は思いのほか少なかった。A級戦犯だというのかと思ったが…。国策の転換による人口流出を食い止めようとした結果だと、好意的な反応が多いのに驚いた。

 安田 市民の間ではいまさら過去を指摘しても仕方ないという意見が多かった。昔の関係者は口が重く、取材では何人も断られた。

 清水 夕張市民は、栄えていたころの思い出はよく話す。みのもんたが全国放送で「ゴーストタウン」と発言したことには怒りまくっていた。どこかでまだ「あのころに戻りたい」という思いがあると思う。

 安福 こちらも話を掘り起こしきれなかったのだとは思うが、閉山以降を語ろうとしない姿勢は確かに疑問だった。今は市民1人ひとりが過去と向き合いながら、将来像を考えないといけない時だろう。

その2 依存の危険性 農業王国も例外ではない

 植木 破綻要因とした「依存と盲従」「国、道、市のもたれ合い」は?

 松村 夕張市長選を振り返って「企業誘致してくれる人がよかった」と、まだ羽柴氏(秀吉)(市長選で次点)を求める市民がいた。依存体質から抜け出せていないのでは、とも思った。

 清水 今も街中に羽柴氏の事務所があった。

 小林 本来の自治なら破綻前に財政をチェックし、引き締めて立て直す。その点で議会が機能しなかったのは痛い。

 広田 オール与党の状況で「反対すればつぶされた」と言っていた元議員の言葉が印象的。物言えば唇寒しの状況は、普通ではないと思わなければいけないのに。

 安福 夕張問題には国と地方の関係という問題が横たわっている。国に利用され、切り捨てられた事例。国の合併に向けた「見せしめ」との声もあった。

 安田 中田市政にかかわったある助役からは「国策の見直しで切り捨てられた構図としては、十勝の農業も同じになる危険性がある。今から自立の視点でまちづくりを考えるべきだ」とアドバイスをもらった。

 広田 たしかに、農業王国の十勝も、厳しい見方をすれば、国の政策に乗っているといえる。エネルギー政策で石炭が簡単に石油へと転換し、夕張が一気に衰退へと向かったように、何かの変わり目が怖い。

その3 鈍い危機意識 十勝でも始まっている「夕張化」

 桜庭 十勝の自治体や住民に「夕張問題」は響いたのか。

 丸山 鈍い。道内で起きたのに、十勝の自治体は身近に感じていない。ある自治体のまちづくり会議では、相変わらず企業誘致や道路整備だけを議論している。

 小林 国の補助事業削減は、生き残りをめぐる自治体間競争を招いた。地方はどう生きるか、対応力が試されている。

 植木 国の選択と集中に対応するには、首長がしっかりしないといけない。首長のリーダーシップは必要な要素だ。

 松村 夕張は強力すぎる指導力が、ある面であだとなった。まちづくりにはリーダーシップとともに、夕張に欠けていた住民のかかわりも重要。

 小林 だが住民が行政に関心を持たないのは十勝も一緒。夕張は炭鉱閉山後の方針転換に失敗しただけ。特別ではないのに。

 安福 破綻していないだけで、市民生活の締め付けによる「夕張化」は十勝でも始まっていると思う。行革などで削りやすいところから削っている自治体は多い。

 広田 情報収集する管内首長もいるが「夕張みたいになりたくない」というのみ。これは乱暴な言い方だが、管内で今1カ所でも再建団体入りすれば、住民意識も変わるかもしれない。

 小林 自治体破綻に住民の関心が薄いのは、生活レベルに厳しさをまだ感じていないから。地場企業の倒産や病院閉鎖、学校閉校など、地方疲弊によるさまざまな影響は、十勝にもこれから出てくるだろう。

その4 目利きの力 「地域資源探し」を

 桜庭 夕張のつまづきから、十勝を含む自治体の生き残りのヒントを探すとすれば?

 安田 夕張にはいい要素があった。映画にメロン。炭鉱も、ほかにはない資源。炭鉱住宅などもそのまま残っていれば、遺産的な見せ方もできたと思うが、当時は価値を見いだせなかった。結果、中途半端に整備され、魅力が半減した。

 安福 トップダウンでハコモノをつくり、住民合意を得なかったことで、行政は住民と乖離(かいり)していた。

 安田 第1部からこのキャンペーンで指摘している通り、住民自身がまちの誇れる資源を見つけ、結び付けていく「あるもの探し」の努力が大切。

 清水 住民や企業が活力を出し、行政はサポートする。両者に関心を持たせるために、行政がすべきことはある。

 植木 自治体は、財政破綻の防止と生き残り策を分けて考えないと。前者に必要なのは、身の丈に合った事業の見極めの力と、首長のバランス感覚。後者には、足元にあるものを探し出す民間の「目利き力」と行政の支える力だ。

 小林 十勝の市町村は、この両面を踏まえてまちの魅力を売り出していくことが求められている。人口減少の時代の地域間競争に勝ち残るため、必要な「何か」を見つけ、次回は提案してみたい。

破綻の今
 国の財政再建団体になり、初めての冬を迎える夕張市。市街地に人影はまばらで、シャッターを閉めた店も目立つ。353億円の借金を返すため、高齢者が半数を占める住民の負担が増し、市職員の退職も相次いで将来の自治体運営に影を落とす。全国から相次ぐ行政視察団は厳しい現実に触れ、「『第二の夕張』には注目も寄付も集まらない」と危機感を強めた。

働いた力
 相次ぐ炭鉱閉山を受け、「観光」をまちの主要産業に位置づけ、1979年から24年間、市長として夕張市をけん引した故・中田鉄治氏。身の丈に合わない大型予算による“ハコモノ行政”や不適正な財務処理は、借金を増大させた。加えて、多額の地方債発行を認め続けた国や、不正な財務処理に見てみぬ振りをした道。3者の“もたれ合い”が破綻(はたん)へと導いた。

働かなかった力
 観光事業への多大な投資を進める夕張市政に対し、市民や経済界は依存体質から抜け出せず、議会は追及することなく盲従した。夕張リゾートの西田吏利社長は「一度潤った地域は機能が低下する。判断力がマヒ状態だったのでは」と指摘する。市のマウントレースイ買収は「市民の総意」で決定。破綻が現実になったとき、市民の自立の力が生まれてきた。

未来への力
 市からの助成金がカットされる中、40を超えるボランティア団体が行政サービスの代替やまちづくりに一役買う。主婦や会社経営者のほか、市議や市職員もメンバーとなっている「ゆうばり再生市民会議」は行政に参加する市民の役割を担う。一方、道の調査で“夕張予備軍”は50市町村以上もある。十勝の自治体も地域を再考する時期にきている。

→夕張破綻、今後の地域の在り方は…

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予告…最終部は「十勝の可能性」

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