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十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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[2007.06.13]
清水 <下> 教育
廃校活用 人脈が導いた芸術高

 「先生、通信制高校を開設したがっている会社がある」
 2004年12月、横山一男教育長のかつての教え子で、札幌と小樽で寿司店「千春鮨(ずし)」を営む五十嵐日出男店主(54)から一本の電話が入った。株式会社が運営する通信制の「北海道芸術高校」開校に向け、“もう一つの特区”が動きだした瞬間だった。

十勝清水キャンパス(旧熊牛小学校)での今年度第1回のスクーリング開講式。今年は400人以上の生徒が同キャンパスで勉学に励む
通信制開校で もう一つの特区
 国の構造改革特区に認定され、清水小学校での少人数学級を実現した清水町。「教育のまち」として注目される一方で、小規模校再編で生まれた閉校校舎の利活用は、町の大きな課題だった。

 04年度までに町内で閉校する小学校は北熊牛など6校。国の補助金で建設した校舎の転用先は、福祉や教育分野に限定されるが、町内の公共施設は既に足りており、何より改修費工面も難しい財政状況。町は補助金返還を伴わない範囲で活用の在り方を探っていた。

 ちょうど同時期、全国で専門学校やサポート校を運営する「NDGホールディングス」(本部東京)が、音楽やダンスなど多彩な芸術コースを備えた通信制高校の開設を検討していた。

 札幌での開校が頓挫したころに、当時同社運営の専門学校職員だった、同校の鈴木康弘事務局長が千春鮨ののれんをくぐる。「たまたま大将に相談したら、すぐに教育長、高薄渡町長へと伝わった。今でも信じられないような縁だった」

どんな生徒が?住民説得に苦心
 町民による第九合唱をはじめ文化・芸術活動が盛んな清水は、芸術を前面に打ち出す同校のコンセプトと見事に一致。町も「スクーリングなどで交流人口が増え、経済波及効果が見込める。生涯教育推進にもつながる」(高薄町長)と判断。電話からわずか3カ月余で、旧熊牛小学校貸与を決定。05年7月に(1)株式会社による学校設置(2)校地・校舎の自己所有を必要としない学校設置−などを求め、特区申請した。

 ただ、地域の協力を得ることには腐心した。同校の安藤国廣教頭=写真=は「当初は通信制高校に対して良いイメージを持っていない地域住民も多く、簡単に理解を得られたわけではなかった」と明かす。不登校生徒を募集対象にしていたこともあり、申請前に開かれた住民懇談会では「一体どんな生徒が集まるのか」といった不安も上がった。高薄町長らが地域に入り、説得した。

254人の笑い声 地域で積極交流
 初年度集まった生徒は254人。校舎に子供たちの笑い声が戻った。

 生徒たちは校舎を飛び出し、町内の老人ホームなどでお年寄りにメークを施すなど、積極的に町民と交流を深めた。同校の招いた著名な特別講師による講演会やピアノ公演も好評、同校へ理解を示す地域住民が自然と増えた。生徒の酪農体験では地元農家が全面協力。畑で取れたジャガイモを届けてくれる住民もいた。

 清水町が認定を受けた2つの教育特区は、教育にかかわる町民のすそ野を確実に広げている。
(清水生)
(第2部おわり)



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