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十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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[2007.06.08]
大樹 <下> 宇宙
取り組み浸透 研究者と連帯感

5月末に町多目的航空公園で行われたモーターグライダーの試験。同公園では頻繁に航空宇宙実験が実施され、技術力アップに貢献している
巨大飛行船出現 住民の語り草に
 全長68メートルの白い物体がゆっくりと大樹の大地から離れていく。遠くからでも分かるその威容。のどかな酪農と漁業の町に突如出現した実験用の飛行船に、目撃した町民は一様に驚いた。

 2004年に町多目的航空公園(町美成)で実施された「成層圏プラットフォーム」実験。そのインパクトから、今でもまちの人の語り草だ。町の宇宙関連の取り組みを支援する民間団体「町スペース研究会」の酒森清会長(大樹建設工業社長)は「あの大きな飛行船が大樹の空に上がったときは、ついにすごいことをやったなと思った」と感慨深げに振り返る。

日本で唯一の環境 好評博し施設充実
 町が宇宙基地誘致の夢を託した同公園は、1995年に完成した。砂利などをてん圧した全長1キロの滑走路と広大な敷地。航空宇宙技術研究所(航技研)が小型飛行機「ドルニエ」による実験を始めると「時間に制限がなく自由に飛べるのが良い」と好評を博し、関係者の気持ちは施設の充実へとまい進。総工費約4億円で滑走路をアスファルト舗装した。

 長年の取り組みが浸透し、人口6500人の町民には宇宙関係者との仲間意識、連帯感が芽生えていた。同公園のそばで酪農を営む小山田又五郎さん(71)は「早朝の実験は寒かろう」と搾乳後の牛乳を沸かし、ポリタンクで運んで飛行船実験メンバーに振る舞った。大樹漁協は、別の実験で海に落下した飛翔物の回収作業に漁船を出した。

 大樹町は、道内研究者の拠点にもなった。道工業大の佐鳥新准教授は、社長を務める北海道衛星本社をこの町に置いた。今後打ち上げる実用衛星を「航空宇宙に情熱を傾けているまちにちなんで『大樹』と命名する」と語る=写真。06年12月には北大の永田晴紀教授らが町内で全長2.8メートルのハイブリッドロケットを打ち上げた。

宇宙の話題次々… 小さな町挑戦続く
 07年5月、大樹はまた一歩“宇宙”に近づいた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、三陸大気球観測所(岩手県大船渡市)を08年度、同町に移転すると表明したのだ。米ロケットプレーン社の無重力商業飛行の離発着場候補地、500億円を投じる宇宙エネルギー開発基地の構想浮上…。最近は「宇宙のまち」が話題に事欠かない。

 「成層圏−」実験が行われた04年度の経済効果額は約5億2000万円。昨年末町で開業したビジネスホテルには、実験関係者らが宿泊して混雑している。地方経済が冷え込む中、大樹には活性化への光が見える。

 宇宙基地誘致構想から22年。広大な宇宙を目指す小さな町の挑戦は続く。歩みがいつか宇宙に届くと信じて。
(松村智裕)


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