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十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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[2007.06.04]
本別 <上> 福祉
町と住民 同じ意識が成功導く

 アリーナいっぱいの熱気は、真夏の暑さだけではなかった。2006年8月24、25日に本別町体育館で開かれた「第7回介護保険推進全国サミットinほんべつ」。認知症を主なテーマに、全国から行政、事業所など福祉関係者約1360人が集まり、講演会、パネルディスカッションに聞き入った。

 福祉の町づくりの大きな成果に、同町地域包括支援センター所長補佐の飯山明美さん(46)=写真=は「本別の福祉を発信できた」と喜んだ。

住民の高齢化  始まった施設検討
 町は1994年、町国保病院老朽化に伴い、医療、福祉に総合的に取り組める施設整備の必要性に迫られた。高齢化率は全道平均を大きく超え、近郊には医療機関が少ない。将来の“医療福祉過疎”という危機感が現実味を帯びた。当時、町福祉課総合福祉推進準備室長だった砂原勝副町長は「将来の介護保険制度導入も見据えると、生活の基本になる部分だけに町民ニーズは高かった」と話す。

 自身も北欧視察で福祉に高い関心があった。町民の声に後押しされるように、介護に視点を置いた「本別町地域包括医療推進構想」を96年に策定。基盤整備はできた。だが「サービスそのものはなかった」。

 そのころ、飯山さんは保健師として認知症の高齢者や家族と接していた。町の調査では、在宅の要介護高齢者の4割、施設入所の7割に、認知症とみられる症状が出ていた。

 相談の中には、認知症の症状も接し方も分からず、親子関係が崩壊寸前の家族もいた。「もっと早い段階で相談に来てくれたら…」。疲れた顔を見るたびに思った。「相談だけでは根本的な解決にならない」。ほかの保健師と苦悩していた。

2日間にわたり認知症を主テーマに開催された介護保険推進全国サミット。1360人あまりの参加者を通じて福祉の町づくりを発信した(昨年8月)
国のモデル事業応募が転機
 他市町村も同様の課題を抱えていた中、本別町の転機は99年、厚労省の全額補助による高齢者介護のモデル事業指定だ。

 加入していた「福祉自治体ユニット」を通じて、町が同事業を知ったのは、募集締め切りの10日前。「テーマはどうする?」「中身は?」など役場内で検討中、現場の保健師から「認知症」を薦める声が挙がった。これに当時福祉課長だった砂原副町長がピンときた。現場と職員が協力し、一気に企画書を書き上げた。

 テーマは早期発見、介入を目指す「初期認知症の対応」に決まった。企画案は通った。
 当時の幹部の決断を思い出し、飯山さんは「上司や現場職員の意識が大事。町としてどう進むべきかビジョンがないと、補助事業があっても活用できない」と語った。

認知症テーマにサミット開催
 その後、試行錯誤しながらも同省の補助事業を7年連続で継続。行政や事業者、自治会、介護経験者などが意見交換する「地域ケア研究会」、認知症高齢者を支える「もの忘れ地域ネットワーク」など、地域と一体となった独自の施策が評価され、サミット開催地に決まった。

 サミットで飯山さんがうれしかったのは、参加者が町の福祉の考えを理解してくれたことだ。「(本別町が)住民と一緒にやってきたことを実感できました」。閉会後の会場でそんな感想を耳にした。『やったー』。心の中で叫んでいた。
(安田義教)


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