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十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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[2007.01.14]
年間キャンペーン第1部「活気の源」 番外編
生き残りへ 独自の戦略



 地域間競争に勝つための自治体の生き残り戦略を考える、2007年の年間キャンペーン「まちの力」。第1部として3−10日の間に、全国の先進地に学ぶ「活気の源」全6回を掲載した。取材を担当した記者6人が、各地の取材で感じた力の源泉や、力を生み出した背景、十勝の課題や展望などを話し合った。

(1) 危機からの脱出 「よそ者」の発想で意識改革

 植木 それぞれが取材した地域の力の源泉をたどると、「危機からの脱出」があった。

 清水 「葉っぱビジネス」で訪ねた上勝町は、林業も衰退し町全体が落ち込んでいた。農家は農協に集まって酒を飲んでは愚痴をこぼすだけ。地元の人には「今の生活形態を壊したくない」という意識があったが、それを壊し、危機を脱せられたのは、他町から来た横石知二さんという「よそ者」の力だった。

 安田 佐久島も、バブル崩壊でゴルフ場やヨットハーバーなどのリゾート計画がなくなり、1000人以上いた人口が300人台に減った。アートを持ち込んだのは、東京の企画会社。外から知恵を注入し、自分たちで作り変えたことが、島民の意識改革につながった。

 植木 十勝を見ると、地元意識が強く、よそ者が排除されがち。元気に伸びる企業は疎まれる雰囲気もある。そういった要素をもっとまちづくりに取り込まないと、地域全体では立ち行かなくなる。

 丸山 十勝は閉鎖的な土地柄といわれる。だがもっとしがらみがある東大阪では、立派にやっている。「出る杭(くい)は打たれるが、出すぎた杭は打てないよ」といっていた。

 栗田 矢祭町は有名な「合併しない宣言」で、メディアが続々と来て取り上げた。その結果「もう後戻りはできない」という不退転の決意ができた。町民も「視察を受けるほどすごいことをやっているのか」とやる気に。常に外からの視線を浴びることで好循環が生まれ、新しいアイデアもわいている。

 植木 メディアの注目は、いい意味の“外圧”になる。彦根市でも商店街「夢京橋キャッスルロード」をメディアが取り上げ、ジリ貧のまちに予想以上の観光客が来たことで、ほかの商店街のやる気を引き出した。

 栗田 カギを握る人物は民間人だった。矢祭の根本良一町長も家具屋の社長。すぐに判断するし、ポイントを指示する。首長というより、やり手経営者という印象だった。

 丸山 矢祭のスタンプの記事を見た十勝のある町議は「うちで10年前に考えたアイデア。でも町にはね返された」と悔しがっていた。

 栗田 規模が小さい自治体が多いのも面白い。小さいところほど大きな危機を迎えていた。半面、再生に向かうバネの力も強く、小回りがきき、スピード感がある。

 植木 十勝も小さな自治体が多い。必ずしも大きいことが良いことではない。住んでいる人が考えたことを応援する懐の深さが、行政にほしい。

 栗田 民間の発想と、小さな成功の積み重ねが重要だ。

(2) 「ないものねだり」から 「あるもの探し」へ 地域の“宝発掘”し「物語」を

 栗田 「ないものねだり」から「あるもの探し」への転換は、企画全体に共通するキーワードだった。

 安田 地域の環境を生かした自立に向かった佐久島、山に生えていた葉っぱに注目した上勝、国宝の城を活用した彦根…。危機感が足元を丹念に見詰め、拾い上げる機会を持てた。

 松村 小松市の「よしたけ保育園」は、長戸英明園長という実直なリーダーが、親のニーズを探り出し、対応した。市や県レベルの子育て支援でも、担当者と園長が話し合うなど、園が少子化対策をけん引している。

 栗田 あるもの探しをするなら、帯広では、ばんえい競馬だ。帯広にしかなくなる来年度は、本当の帯広のまちづくりの力が試される。「廃止の危機」で全国に知られたが、今後は、魅力を端的に伝えるドラマ性を持った「物語」をつむぎ、発信していくことが必要。

 松村 せっかくいろいろな商品などで「十勝」の名前はPRされているのに、「そこに何がある」ところまで具体的に知られていない。視察地でも北の屋台や六花亭は知っていたが「ああ、帯広にあるんですか」という反応。場所と物や人を結びつけて物語をつくり、人を呼び込むという、戦略的な発信ができていない。

 清水 視察先と比べて、管内の各自治体が本当に切羽詰まっていないという感じもする。だから合併という選択肢も選ばなかった。

 安田 視察先で、「活性化の委員会などには、郷土史家や学芸員など文化系の人を入れた方が良い」といわれた。まち、土地の良さを知る人に提案をもらいながら、宝探ししてはどうだろう。

 植木 ハード一辺倒ではなく、近くに転がっている素材に着目すべき。地域資源を生かした、身の丈にあったまちづくりが大切。今後は財政が厳しく、人口も減ってくる。その中でいかにまちの力を保つか。資源に気付き、生かせた自治体が残っていくだろう。

(3) 依存から 自立へ リーダーの仕組み作りで人は育つ

 植木 もう1つのキーワードは「依存から自立へ」。先進地は依存精神を払しょくしたところばかりだった。

 丸山 実は、東大阪の組合は、青木豊彦社長らが人工衛星の話を打ち上げたものの、夢だけ語って具体策を示さず、職人らに丸投げ。その結果、怒った若手が蜂起し、当初のリーダーが役職だけのお飾りになった。

 安田 それは組合の“乗っ取り”だ。何か目立つことを打ち出すだけで長続きしない団体やリーダーは十勝にも存在するが、今の時代、それではダメということ。軌道に乗せるまで育てるのもリーダーシップ。仕組みまで作ることで、その後の競争力が違う。うまく仕組みを作ると、活性化は継続できる。

 植木 彦根市では後継者が帰ってきていて、地域だけでなく外部の人も招き、まちの文化、歴史を教え、語り合う「寺子屋」がある。1人のトップリーダーではなく、人を多く育て、町全体の力に変えようとしている。

 清水 上勝町の「葉っぱビジネス」は、個人がある程度力を付け、事業のめどが立った時点でネットワークを構築し、軌道に乗った。すでに他の追随を許さない状況を作っており、トップが変わっても安泰と感じた。

 安田 キラリと光るまちは、実は十勝にもある。本別町は福祉の町で有名。大樹町は宇宙に関して国内の研究者に認知度が高い。

 丸山 取材先で「十勝には、ばん馬もモール温泉もあるのになんで発信せんの」と言われた。また、十勝の農産物もWTO(世界貿易機関)交渉などで大変と話すと、「私やったら1年間ヨーロッパにただで野菜を送ってPRする」と“逆提案”もされた。

 植木 次回の第2部では、今回挙げたキーワードに合致する、特徴を打ち出して頑張る管内の自治体を取り上げ、十勝の持つ「底力」を探ってみよう。

■高齢者の力
 高齢者が地域活性を担う徳島県上勝町(人口約2070人)。日本料理に添えられる木の葉「ツマモノ」を生産する彩(いろどり)事業が大成功。農家の大半がお年寄りだが、高齢者専用パソコンなど独自の情報ネットワークを整備し、事業を軌道に乗せた。
(清水生)

■観光の力
 国宝・彦根城のある滋賀県彦根市(人口約11万人)。唯一の観光資源だった城を活用し、城下に江戸町屋風の街並みを再現。「一生住んでも悔いの残らないマチに」という住民の決断で、ゼロから年間45万人の観光客を呼び込んだ。
(植木康則)

■自治の力
 「合併しない宣言」で知られる福島県矢祭町(人口約6800人)。地元商店発行のスタンプ券と商品券で、税・公共料金を納める制度を開始。町民の発案を町長のリーダーシップで実現し、町への信頼向上と経済活性化をもたらした。
(栗田直樹)

■文化の力
 アートによる島おこしをしている愛知県一色町佐久島(人口約330人)。島の環境に合った作品を展示し、アート関係者と島民が共同でイベントを開催。島の魅力が広まるきっかけになり、観光客層が拡大、島の活性化につながっている。
(安田義教)

■子育ての力
 企業城下町の石川県小松市(人口約11万人)。親の声を事業に反映させた私立保育園園長のぶれない信念と行政のサポートで、「産み育てやすい環境」を構築。合計特殊出生率の数値は5年連続現状維持。市内には公営では珍しい絵本図書館もある。
(松村智裕)

■産業の力
 不況にあえぐ中小製造業の集まる大阪府東大阪市(人口約51万人)。活気を呼び戻すため、人工衛星打ち上げを計画。新産業への挑戦に、職人や学生は夢を抱いた。若者が集まり、宇宙産業参入を目指す企業も。他業種にも効果が波及しつつある。
(丸山一樹)


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