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十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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[2007.01.10]
6. 産業の力
「大胆な『宇宙』事業、若者引きつける」
人工衛星で夢打ち上げ

 「地域の持つ技術力を駆使し、人工衛星を打ち上げる」−。

 中小製造業が集まる大阪府の東大阪市。不況、担い手不足に悩む業界で、ひときわ元気な組合がある。地元中小企業、大阪大など産官学連携で2002年に発足した「東大阪宇宙開発協同組合」。職人、学生、専門家が集結、国産人工衛星の実現にまい進している。

 人工衛星は、その名も「まいど1号」。07年度末までに「まいど1号」を含めて2機を打ち上げ、その後は新型人工衛星の実用化を目指す。

製造業界に 新風送り込む
 「まちおこしに不可欠なのは常識を覆し新産業の種をまく勇気だった」と、同組合の竹内修理事長(65)=写真=は振り返る。最盛期の1983年、東大阪市は国内一の工場集積率を誇り、1万33事業所で8万9000人が働いていた。だが組合発足時は6000事業所を切り、従業員数もピーク時の3割減。トタン屋根の工場が所狭しと軒を連ねる中、いくつもの事業所がシャッターを下ろしていた。

 「まちに活気を与えるには若い力が第一。若者を引きつけるには『宇宙』という大きな事業が魅力やった」。構想を提案した青木豊彦さん(61)=飛行機部品製造・アオキ社長=は熱く語る。

 青木さんは宇宙関連の学会に足を運び専門家との人脈を構築、「夢は実現するためにある」とパワフルに突き進んだ。声を上げた当初は、大胆な発想に周囲は戸惑ったが、製造業界では不景気に左右されない新フィールドに映った。青木さんの人柄とチャレンジ精神に、職人や若者は引きつけられた。ユニークな事業に、人が人を呼んだ。

 事業が本格始動して5年目。これまで大阪大、大阪府立大の学生やOB、宇宙航空研究開発機構などから約70人が東大阪の夢に携わった。その中から技術者の道を志す人が現れ、宇宙事業参入を模索するベンチャー企業が誕生した。

最初に人工衛星構想を提言した青木さん。「若者をまちに呼び寄せよう」と宇宙産業という大事業に着目した
地域知名度向上 若手技術者も育つ
 東大阪の知名度も向上。一般の製造業には2年間で40人ほどの新卒就職が決まった。「東大阪出身が誇り」という市民も出てきた。活性化を願い青木さんがまいた種は、着実に芽吹いている。

 05年、理事者側と現場の若手技術者の計画に対する認識の違いから、技術者中心の組織に一新された。しかし「若者を呼び込む」「人工衛星製造」という目標は変わらない。

 同組合では、事業で育った若手技術者が新たなものづくりの文化を築き、発信してくれることに期待を込めている。「航空、電子工学産業などと絡み合い、500億円産業に発展する可能性もある」。竹内理事長は情報・通信産業のメッカ、米国カリフォルニア州のシリコンバレーと未来の東大阪をだぶらせる。

 人工衛星にとどまらず無限大に広がる東大阪の夢。「夢を打ち上げるんやない。夢で打ち上げるんや」−。組合のモットーが、挑戦し続ける人々の背中を押す原動力になっている。
(おわり。丸山一樹)

■大阪府 東大阪市
 人口約51万人。中小製造企業が集まる「ものづくりのまち」として知られ、歯ブラシからロケット部品まで業種は多岐にわたる。組合の人工衛星構想は2003年度から新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託事業として開発が進んでいる。


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