WEB TOKACHI
十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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[2007.01.06]
4. 文化の力
「『ないものねだり』から『あるもの探し』に」
アート活動で島を活性化

 愛知県三河湾に浮かぶ一色町佐久島。穏やかな波が打ち寄せる海岸沿いに、大きく真っ黒な「箱」が置かれている。観光客がはしごに登って遊んだり、海を眺めてくつろいだり。

海岸に設置された「おひるねハウス」。遊ぶ人の姿が影絵のように浮かび上がり、島の風景に溶け込む
 「のんびりできていいですね」。岐阜県から来た親子がうれしそうに話した。箱の正体は島内に常設展示中のアート作品の1つ「おひるねハウス」。人と海の対話をテーマにしている。

 佐久島は、夏は海水浴客、通年で釣り客が訪れる観光と漁業の島。人口は約330人。島内には信号機もコンビニもない。

島を舞台に制作 伝統行事とも連動
 「以前は愛知の人でも佐久島を知らなかった」。島おこしを進める「島を美しくつくる会」の初代会長で、現在は副会長を務める鈴木喜代司さん(52)は語る。

島内の寺に置かれたアート作品「海神さま」
 人口、観光客ともに先細り。期待したリゾート開発の計画は、バブル崩壊で頓挫した。それが「アートによる島おこし」で全国から注目を集めている。

 転機の1つは1995年の国土庁(当時)による離島調査。委員長を務めたアート関係者の提案で、町は「芸術性豊かな美しい島」構想で活性化を目指し、実践のため島民で構成する「つくる会」ができた。東京の企画会社の主導で国内外の作家によるアートフェスティバルを毎年開催。しかし、内容が難解で地元と接点が少なく、「島民が置いてきぼり」との声もあった。

 島民が主体的にかかわるため、町は2001年に新たな「三河・佐久島アートプラン21」を策定。アート関係者と島民が協働で、展覧会やワークショップなどのイベントを行う手法にした。

 作家には、完成した作品を持ち込まず、島を舞台にした作品を制作してもらう。伝統行事と組み合わせた催しも発案するなど互いに知恵を出し合い、自らが楽しんでできる企画を考えた。鈴木さんは「『ないものねだり』だったのが、『あるもの探し』の活性化に変わった」と説明する。今年度は「祭りとアートに出会う島」をテーマに11のイベントを行った。

客層に広がり 「基盤ができた」
 この活動で徐々に知名度が増し、アートをきっかけに訪れた人が、もともとあった島の環境を気に入った。年間の観光客は4万人前後。美術ファンだけでなく若者のカップルから老夫婦まで客層が広がった。島おこしの拠点施設「弁天サロン」の管理人、相川光江さん(70)=写真=は「アートで島を覚えてもらえた。今はゆっくり頭を休めに、関東や関西から来る人もいる」と話す。

 島への輸送や宿泊施設の受け入れが限られるため、観光客数は伸びていない。次代への継承も課題の1つだ。だが、同町企画情報課の山崎隆文さんは「佐久島の活性化は数字よりも、島の元気やにぎわいに出ている」とする。鈴木さんは島の将来像を語る。「まだ基盤ができたところ。島の出身を誇れるようになれば成功だろう」
(安田義教)

■愛知県 一色町 佐久島
 県内に3つある有人島の1つ。面積は約2平方キロで、留萌管内天売島の3分の1。高齢化率は50%近い。アートによる島おこしの活動は、2003年に国土交通省などの「全国地域づくり推進協議会会長賞」を受賞した。


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