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十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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[2007.01.05]
3. 自治の力
「住民、商店街のためになる。即断即決した」 
スタンプで税や公共料金

 福島県央の都市・郡山から南に車で約1時間半。茨城との県境が近づく山間の道を抜けると、そのまちはあった。「市町村合併しない宣言」で知られる矢祭町。人口6800人の平凡な町のユニークな制度が、再び全国の注目を集めている。

 地元商店のスタンプ券や商品券で税・公共料金が支払える−。矢祭町は2006年8月、全国初の取り組みを開始した。スタンプ券は購入金額100円につき1枚発行、280枚で500円の商品と交換できる。この仕組みで、町税や水道料、保育料などの支払いもできるようにした。

商品券で祝い金やボーナスの一部も
 「住民、商店街のためになる。即断即決した」。根本良一町長(69)=写真=は制度の狙いを明快に語る。わずか1分で決断。9日間でスタートさせたという。自立を選択し国と対峙(たいじ)してきた、町長の強い指導力が垣間見える。

 地方税法上の「納税は現金か証券に限る」というハードルも、職員が預かったスタンプ券を商工会で小切手と交換することで解決した。商品券にも利用を広げ、敬老祝い金や職員ボーナスの一部も同券で支給する。

 町長自ら「コロンブスの卵」と呼ぶ制度の恩恵を受けたのは、地元商店街。「町外の大型店に奪われていた購買力を、つなぎ留めてくれた」。日用品からガス・灯油を取り扱う会社社長、宗田武美矢祭町スタンプ会会長(73)は効果を語る。自身の会社も「売り上げは昨年より1割強は伸びたかな」とホクホク顔だ。

 町総務課によると、スタンプ券・商品券での収納は昨年11月までに計50件48万円。額こそ多くないが、鈴木正良同課長(58)は「選択肢が広がることで納付意識が高まった。町の施策への理解も深まっている」と話す。

主婦の日常会話 制度のきっかけに
町税や公共料金の支払いができるスタンプ券が張られた台紙を持つ発案者の金沢さん
 役場への信頼醸成と商店街活性化。“一石二鳥”の仕組みづくりのきっかけは、町民2人の日常会話だった。

 矢祭町商工会職員の金沢光枝さん(52)は「町主催のイベントの参加費用にもスタンプ券が使えたら…」と友人の高信由美子さん(55)に持ち掛けた。町職員で自立課・自立グループ長の高信さんは3年前徴収で訪ねた、高齢世帯の厳しい暮らしを思い浮かべた。国民健康保険料を数十万円滞納していた。「収入は月10万円足らず。でも、スタンプは大事にためていた。これで少しでも払えれば」。即座に町長に提案した。

新制度の恩恵を受ける中心商店街
 矢祭町では“主婦の発想”が生んだ画期的制度のほか、「本を購入しない図書館づくり」を掲げ、全国から約28万冊の寄贈図書を集める。「合併しない宣言」から5年。独自の取り組みに学ぼうと、全国から人口に匹敵する6000人以上が視察に訪れる。

 「議会と役場、そして町民が自立のハラを決めた。運命共同体になった」。根本町長は宣言の意義を語り、こう続けた。「町民に独立独歩の意識が浸透しきったとはいえない。試行錯誤だよ」

 小さな町の大きな挑戦−。矢祭町の歩みに住民自治の原点をみる思いがした。
(栗田直樹)

※高信由美子さんの「高」は異体字です。

■福島県 矢祭町
 福島県の最南端に位置、人口6794人。2001年に町議会が「市町村合併をしない矢祭町宣言」を可決。町役場50人体制を目指すなどスリム化を進める一方、空気圧機器トップメーカーの工場も誘致。14日に寄贈本でつくる「矢祭もったいない図書館」が開館する。


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