WEB TOKACHI
十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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[2007.01.04]
2. 観光の力
「自分たちが一生住んで悔いないように」
古くて新しい城下町再現

 滋賀県の彦根城下、京橋から延びる通りに整然と並んだ、江戸町屋風の白壁の建物。城下町を再現した商店街「夢京橋キャッスルロード」だ。

 「観光がなかったらまちは再生しなかった。彦根は城しかないので…」。同ロード生みの親の1人、「たかさご」の北村久雄代表(70)は振り返る。

殿様を商売にできない空気だった
 商店街のある本町地区は、かつて観光とは無縁だった。江戸時代の築城当時、町人居住区の町割で最初にできた“お膝(ひざ)元”。御用商人がそろい、その子孫も比較的豊かな家庭が多かった。

 だが、駅前再開発によるスーパー進出、居住者の郊外流出や沿道店の展開…。商いを取り巻く環境は厳しさを増していった。「このままではじり貧になる」。そんな危機感が強まる中、本町の道路拡幅で、すべての建物を建て替える懸案に直面する。

江戸町屋風の建物が並ぶ夢京橋キャッスルロード=上。下は舗道にはめ込まれた彦根いろはカルタ
 「オンリーワンの城」を中心にしたまちづくりを−。年間60万人以上の観光客が訪れる国宝の彦根城。しかし、本町地区は完全な素通り。特別な存在である井伊家の殿様の資産を商売に活用するのを好まない独特の空気も色濃かった。

 「一生住んでも悔いのないまちをつくろう」(当時委員長を務めた奥野文雄さん)。決断した住民が、この雰囲気を変えた。お上への依存意識からの自立が始まる。行政主導で作った委員会を解散させ、本町地区まちなみづくり推進懇談会を発足させた。地権者68人が民家に集い、時には明け方まで語り合いながら、江戸町屋という外観基準を自ら条例化するまでにこぎつけた。

 1988年着工。街並みが出来上がるにつれ、観光客が訪れだした。着工から13年で完成。今は34店舗が軒を連ね、彦根城観光客の約7割、45万人が訪れる。固定資産税は建て替え前と比べて3倍に。人通りの多さに触発され、暴走族が走り出すという「おまけ」まで付いた。

屋根ない歴史博物館民間主導で新構想
 商店街を訪れる観光客は確実に増えた。ただ完成から8年経過したキャッスルロードは、入り込み数に陰りも出ている。その打開に向け彦根では、民間主導で「古さを生かした来街者の増加」を目指した試みが始まっている。

 「まちおこしには『ばか者』『よそ者』『切れ者』が必要。今の彦根にはすべてある」。NPO法人彦根景観フォーラム代表の山崎一眞滋賀大学教授=写真=は語る。

 観光は今後、物見遊山のツアーから小人数旅行が主流になるといわれる。山崎教授は、自分のまちのよりどころを丹念に見つけ出すよう訴える。「素晴らしい素材は街のあちこちに転がっている。住民が自分たちの生活を誇りを持って説明できることが大事。すてきな人なら、何度でも会いに来たいものだ」

 街全体にまちの歴史や魅力を伝える語り部がいる、「屋根のない歴史博物館」に−。城下町・彦根の挑戦は続く。
(植木康則)

■滋賀県 彦根市
 滋賀県東部に位置、井伊家35万石の城下町。人口11万人。江戸町屋風の「夢京橋キャッスルロード」、大正ロマンを具現化し、2006年春完成した「四番町スクエア」など、街並みを生かして観光客を呼び込むまちづくりが注目されている。


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