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十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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[2007.01.03]
1. 高齢者の力
「世界中で一番楽しい仕事ですよ」
葉っぱビジネスで元気

 「最初は葉っぱが売れるとは信じられなかった。こんな楽しい仕事、世界中どこを探してもないですよ」

 日本料理などに添えられる色鮮やかな木の葉や季節の小枝「ツマモノ」を生産する徳島県上勝町の農家、菖蒲増喜子さん(81)は、紅葉で赤く染まったモミジの葉を手に、笑顔を見せる。

「ツマモノ」  需要大きかった
 四国の山間にある、2人に1人は65歳以上の高齢者という町が、全国から脚光を浴びる元気な町として注目されている上勝町。林業の衰退とミカン農家の相次ぐ廃業で、過疎と高齢化が進んだ町を救ったのは「葉っぱ」だった。

 「上勝には葉っぱや枝が山ほどある。力のない高齢者でも集められる」。町の第三セクター「いろどり」の横石知二副社長(48)=写真=が、市場に流通していないツマモノの需要が大きいことを知り、JA職員だった1986年、「葉っぱビジネス」を提案して回った。だが農家は「タヌキじゃあるまいし、葉っぱが金に化けるか」と相手にしない。契約農家4軒からのスタートだった。

 初年度は、料理人が求めるツマモノの色や形などの知識が足りず、売り上げは116万円。横石副社長は2年間自腹で料亭に通い詰め、売れる葉っぱのポイントをマニュアル化した。
モミジを手に「こんな楽しい仕事はない」と話す菖蒲増喜子さん=上。毎日パソコンで市場を確かめる=下


 それを農家に配ることで、商品は次第に市場で受け入れられ始めた。ミカン農家廃業後の後継事業を探していた人が、1人また1人と加わり、4年目、契約農家は44軒と10倍を超えた。ツマモノを「彩(いろどり)」としてブランド化。売り上げは伸び続け、2004年度までの累積販売高は20億円。現在取り扱う商品は「モミジ」「南天」など約320点で、出荷先は首都圏、道内など全国38カ所を数える。

若返った思考
 パソコンも駆使 夫の清さん(80)が収穫、増喜子さんがパック詰めの担当だ。原料となる植物を一から栽培。「この年齢じゃ、都会では働けない。ここなら年なんか関係ないんだよ」。今まで触ったこともなかったパソコンも、事業を支える大事なツール。正座の姿勢で出荷や売り上げ、市場動向を探る目は真剣だ。

 横石副社長は「とにかくみんな元気。年収1000万円を超える人もいる。収入を得て社会の役に立てる喜びを取り戻したお年寄りは、さらに工夫し、知恵を絞るようになった」と、高齢者の気持ちと思考の若返り方に驚く。

 彩事業の外部からの高い評価と実績は、思わぬ好循環を生んだ。収入を求めて出て行った若者が戻り始めた。Iターンも珍しくない。高齢者の医療費は激減。税金を納め、町は基金の積み増しも可能になった。

 高齢者が地域活性の主役を担う同町。横石副社長は言い切る。「どんな小さな町にも資源はある。問題はお年寄りを含め町全体でその資源を生かせるかどうか。『変えたくない安心感』から抜け出さない限り、まちは変わらない」
(清水生)

■ 徳島県上勝町
 徳島市の南西40キロに位置、人口2070人。高齢化率は約47%で、四国一小さな町。2001年から全国最多のごみ34分別を実施し、リサイクル率80%を達成。03年に「ごみゼロ宣言」を行うなど、環境への取り組みも注目されている。


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