十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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 [2006.08.02]
「ごみゼロ工場」リコー沼津事業所(静岡県)ルポ
創意工夫で再資源化100%達成

 環境に与える負荷を軽くする取り組みを通じて、経費節減と会社イメージ向上を積極的に図る企業が増えている。ごみの減量や再資源化の促進から、製品輸送の幹線を船や列車に移し、トラック利用を減らすモーダルシフト、環境に優しい材料、製品を購入するグリーン調達など手法はさまざまだが、「環境経営」の実践は企業活動に欠かせない視点になってきた。そうした中、「リコー沼津事業所」(静岡県沼津市、安達弘所長)は、1999年という比較的早い時期から、排出物の再資源化率100%を達成。この6年間で、ごみ排出量を400トン削減、2300万円の経費節減に成功した。「環境経営」の先駆けとなった同事業所の取り組みをリポートする。(犬飼裕一)

分別徹底、「買わない工夫」も
排出400トン、経費2300万円削減


写真横のひもを引くと、分別先のごみ箱のふたが開く仕組みがある北プラントの分別ステーション
 「リサイクルショップよろずや」「ブックランド沼津」「プラパーキング」…。

 事業所の資源分別・回収所「沼津中央リサイクル市場」には、凝ったデザインの看板や居酒屋の軒先で見かけるような赤ちょうちんが並んでいる。アーケードの雰囲気も含め、まるでにぎわう商店街のようだ。

 案内してくれた同事業所総務センターの秋山央さん(34)は地元の小学生が描いたシャッターの絵を示しながら、「遊び心を入れなければリサイクルは長続きしません」と説明する。頭上を見ると、店名の下側に「高く買い取ります」「料金200円」などの文字が躍っていた。実際に料金を取るわけではないが、遊び心でこうした看板を作っているのだ。

 現在、同事業所では排出される3120種の廃棄物を56種類に分別し、リサイクルルートに乗せている。「中央リサイクル市場」に集められるのはそのうち、部署共通で排出される26分類。プラスチックや紙類、鉄くずなど、搬入された廃棄物は、分別や減容積などの一次加工を経た後、新たな材料として出荷されるのを待つ。

 事業所が本格的にごみの減量・再資源化に着手したのは1998年。取り組みの背景には、同事業所がリコー全体のエネルギー消費量の約5割、廃棄物の約4割を排出していたという特徴があった。

 最初は割りばしの分別という小さなことからスタートした。「まぜればゴミ 分ければ資源」を合言葉に、部署単位の廃棄物調査、排出物の容積を減らす機器の導入、中央リサイクル市場の新設など試行錯誤を重ねながら、分別収集を徹底的に推進した。

 100%の再資源化に向けては、廃棄物の行方をメーカーなどに問い合わせたほか、新聞・雑誌からも情報を収集、対策に万全を期した。包装や容器の変更による「ごみを買わない工夫」などの努力を積み重ねた。その結果、「ごみゼロ工場」という目標を予定より2年短いわずか1年で達成した。

多くの“店舗”が並ぶ中央リサイクル市場。午後2時半から同3時半の営業時間内はさまざまな部署の従業員でにぎわう
リサイクルされる品物と中間処理物、廃棄物(リサイクル資源物)が分かりやすく展示されている環境テーマパーク
 「中央リサイクル市場」の中にはそのほか、廃棄物と中間処理品、再生品をそれぞれ展示した「環境テーマパーク」も設けられている。ペットボトルがペレットを経て作業服や制服になる工程、紙が燃料やトイレットペーパーになる流れがその目で確認できる。

 「市場」の存在は従業員の意識向上に役立っている。また、さまざまな人が出入りするため「他部署の従業員とのコミュニケーションの場にもなっている」(秋山さん)と、思わぬ効果を生んでいるという。

 トナーを生産する北プラントの分別ステーションには、廃棄物の写真隣に付いたひもを引くと、連動したごみ箱のフタが開く「モデル分別ステーション」があり、分類先が一目瞭然(りょうぜん)。分別が不明なものには、一時収納場所の「迷い子ボックス」を用意、楽しいアイデアが多数見受けられた。同プラントの荻野健典課長代理(41)は「排出物の削減方法について、新しい仕組みはないかと常に考えている。新しいアイデアは他部門にも適用されるので、ライバル意識を持って取り組めている」と話す。


 <リコー沼津事業所>ポイントカードなどに使われる書き換え可能紙、トナーや有機光半導体などの生産・研究開発を行っており、実験的な商品を含む多品種(約4600品目)少量生産が特徴。1997年にISO14001認定、2000年には日本経営品質賞を受賞した。従業員数は約1900人。



環境負荷 50年で8分の1へ


 コピー機などOA機器の総合メーカー・リコーの生産部門では2002年3月までに沼津事業所と同様の「ごみゼロ工場」を国内16カ所、海外9カ所の全事業所で達成。リコーグループ全体でもモーダルシフトやグリーン購入の推進などで2050年までに事業活動全体での環境負荷を2000年度の8分の1に削減することを目指すなど、環境対応を経営の大きな柱として掲げている。

 リサイクル市場の設置など、同事業所の環境経営確立に尽力した奥勇次郎さん(62)=現販売事業本部ISOコンサルタント=は、環境経営の実践や沼津事業所のISO14001の認証取得について「掛け声だけでは機能しない。システムや遊び心も大切だが、最も大切なのはトップの姿勢」と強調。今後について「本事業所は生産ロスゼロの完全生産工場づくり、事業所外では2次、3次の下請け先まで考慮して、仕入れ先との協働による環境負荷の低減を目指したい」と抱負を話している。


 <ISO14001>国際標準化機構(ISO)による国際規格で、環境マネジメントシステムの構築について定めた仕様書。組織が自ら環境方針と目的・目標を定め、その実現のための実施計画を策定(Plan)、運用(Do)し、その結果を監視・測定(Check)した上で、次のステップを目指した見直しを行う(Action)という一連の行動を通じて、環境に与える負荷を減少することを狙いとしている。
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