施設問題 “地産地消”阻む
「バイオマス(生物資源)に恵まれた十勝や沖縄では、バイオ燃料を極力、産地で消費させる“地産地消”が理想」。西崎邦夫帯広畜産大学教授はこう指摘する。そのためには「農産物由来の十勝産エタノールを地元でガソリンに混合する仕組みを確立しなくては。税制面の優遇措置を国へ求めることも必要。地域としての総合戦略が求められる」
民間努力では無理
「E3燃料」実用化のカギは、流通の仕組みづくりにかかっている。
西崎教授がリーダーを務める十勝支庁の十勝バイオマス利活用促進会議エタノール検討部会は、普及に向けた課題を洗い出し、国に対する要望事項をまとめた。その柱は▽ガソリン税の二重課税回避▽輸入エタノールとの内外価格差補てん▽製造・流通設備取得にかかわる設備投資の税額控除−などだ。これらはいずれも「民間企業の努力のみで解決できない制度的問題」として立ちはだかっている。
報告書では、製油所が1カ所10億円以上、内陸型油槽所(混合拠点)は同7億−10億円、給油所整備には同170万−670万円の投資が必要と試算。製油所は苫小牧、釧路に偏在しており、十勝に新たな施設を立ち上げることも検討課題として挙げている。
沖縄で突破口
油槽所でガソリンにエタノールを混合する際には、ガソリン精製とは別にガソリン税が課される。これがいわゆる二重課税の壁。
この突破口を実践しているのが、サトウキビ由来の燃料で実験を重ねる沖縄県。「未納税移出」という仕組みを、バイオ燃料で初めて適用させた。石油メーカー・りゅうせき(沖縄)のバイオエタノールプロジェクト推進室、神里哲さんは「『未納税移出』なしに大規模な実験は実現できなかった」と話す。
宮古島では現在、行政機関の公用車300台が走行実験に参加。来年度は1000台への拡大を見込む。
ただ、移出側と受け手間で交わされる移出通知・移入証明、税務署に対する届け出書などで新たな事務手続き、コストが発生するのも実情。タンカーなどで他燃料との混載は許されず、「タンクローリーも専用になるためコスト高にならざるをえない」と神里さんは指摘する。
現在、帯広市内で行われている走行試験では、「E3燃料」の二重課税分は十勝圏振興機構が負担しており、使用量の増加に合わせて、同制度の利用は不可欠になる。
税制改正を要望
一方、環境省は農水省とともに、「E3燃料」を製造する際のエタノール分には課税しないよう、財務省に対し税制改正を要望中。「バイオマスニッポン総合戦略」の目標達成に向けて国が先進地の支援を進める中、新たな制度が実現する可能性はある。いずれにせよ、今後培われる“十勝型モデル”が、日本の環境エネルギー政策をリードすることになる。
「エタノールを活用して環境、燃料、食糧問題のバランスをいかに取るか−判断は目の前に迫っている」と西崎教授。基幹産業・農業に深くかかわったバイオ燃料は、地球環境保護という大きな目標に向かいつつ、十勝の産業・経済を、新たな発展段階に押し上げる潜在力を持つ。
(おわり、広田実)