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十勝毎日新聞社
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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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原料作物の課題
収入維持の仕組みを
農業王国が“緑の油田”に
[2006.12.15]
国の政策、栽培拡大を左右

 「仮に道内で収穫した小麦とビートの全量をバイオエタノールにした場合、60万トンが製造できる」。帯広畜産大の西崎邦夫教授は、北海道の農地が持つ“緑の油田”としての可能性を語る一方、「政策など現在の仕組みを打ち破らないと、原料の安定生産も含めてバイオ燃料の普及は難しい」と課題を指摘する。

安価な提供なら
管内の製糖工場で受け入れられたビート。エネルギー用途だと価格は4分の1程度が見込まれる(10月、山下僚撮影)
 国内のバイオ燃料振興で当面の問題は原料の価格とそれを支える農業政策だ。

 「産糖制限でビートの将来は先行き不透明。余剰分の引き取り先ができるのは歓迎だが、どちらも同じ手間をかけて育てたビート。今までより安価に供給するなら抵抗がある」。芽室町の60代の畑作農家はこう話す。

 道内農業団体が来年度から清水町に建設するエタノール実証プラントの試算では、ビートの原料価格は1トン当たり4200円。砂糖原料用は約1万6000円で取引されている。「もうけを除いた物材費だけでも1トン9000円はかかる。最低それくらいもらわないと収支が合わない」とある農家は望む。余剰分だからという理由で「買いたたいた」のでは、農家の耕作意欲は上がらない。

 ビート以外の燃料作物にも「収入」の壁が立ちはだかる。

 「栽培したナタネでBDF(バイオディーゼル燃料)をつくれば、特に十勝なら、トラクター燃料の完全自給も可能」。道立十勝農業試験場(芽室町)の菊地治己場長は、こう夢を広げる。しかし、ナタネ栽培でも、所得確保がネックとなる。

重要な「緑ゲタ」
 管内の畑作農家の大半が対象となる「品目横断的経営安定対策」が来年度から始まる。この制度下では、農家所得が過去の生産実績に基づいて補償される。いわゆる「緑ゲタ」だ。農家の心理としては、対象の畑作4品で、将来見込まれる「実績」の見直しに備えて「緑ゲタ」の数字を維持したいところだ。

 現在、ナタネなどの燃料作物は、この対象作物になっていない。「緑ゲタ」部分は何を栽培しても固定化しているので、短期的には新規作物を導入しやすくなる。しかし、限られた農地内でナタネなどの採油植物を作ると、「品目横断−」に算定される畑作4品の実績を下げ、将来の見直し時に収入減につながる危惧(きぐ)はぬぐえない。

新たな位置付けを
 菊地場長は「バイオ燃料の振興は、地球環境保護という形で消費者の利益になる。過去実績が見直される場合には『環境対策』など新たな位置づけで生産者所得が補償されてほしい」と話す。

 十勝圏振興機構(とかち財団)の有塚利宣理事長は「農作物のエネルギー活用が広がっていけば、作っても作っても足りないという状況が生まれる。十勝農業には、無限の供給責任が生じてくる」と強調する。

 食料だけでなく、エネルギー生産の分野でも、十勝は大きな役割を担うことになる。安定生産の仕組みづくりに向けて、生産地から国に声を上げていく必要がある。
(高田敦史)

 <十勝のバイオマス資源量>小麦とビートの収穫量は209万5200トン(2005年)で全道の44.2%。西崎教授の試算では、全量をエタノールにした場合、25万トンが製造できる。規格外小麦(約2万7000トン)を全量エタノール化すると1万1600キロリットル。
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