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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan

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7.研究進む家庭用燃料電池



<燃料電池>水素と酸素の化学反応で発電する装置。排出するのは水のみで、温暖化ガスのCO 2や酸性雨の原因となる窒素酸化物、硫黄酸化物をほとんど発生しない。電解質の種類によって「固体高分子型」「リン酸型」などに分類され、それぞれ運転温度が異なる。

<LCA>
資源採取から製造−流通−使用−廃棄に至るまで製品の一生涯で環境に与える影響を分析し、総合評価する手法。
[2006.01.11]

普及目指し開発急ピッチ
高効率で発電、送電ロスなし
「エコプロダクツ2005」で公開された、新日本石油の灯油仕様燃料電池(奥が電池、手前が貯湯槽。昨年12月15日)
 「燃料電池を家庭に導入すると、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を、(送電による)従来システムに比べ30−40%削減できる。余熱はお湯に変換でき、エネルギー効率が高いので、家計にも優しい」−。世界で初めて灯油仕様の家庭用燃料電池システム「エコボーイ」を商品化する新日本石油(本社東京)の遠藤明・FC開発グループマネジャーは、期待を込めて語る。

幅広い層が 会場で注目
 同社は昨年12月15−17日、東京ビッグサイトで開かれた国内最大級の環境総合展示会「エコプロダクツ2005」に「エコボーイ」を出品した。ブースにはビジネスマンだけでなく、主婦や学生ら幅広い世代が足を止めて熱心に質問、注目度は抜群だった。

 システムは発電、貯湯(容量200リットル)の2ユニット。発電出力は約1キロワットで、一般家庭に必要な電気の6割分を賄う計算。灯油から水素を取り出すために、独自の触媒技術を開発した。3月20日から、年間契約料6万円で関東圏や北海道を対象に、100台の設置先を募集する予定だ。

 開発を担当した遠藤マネジャーは「将来、エアコン並みにコンパクト化し、価格は1台40万−50万円程度に抑えたい。耐用年数も8年程度に延ばす」と話す。現状は1台1000万円ほど。本格普及はまだ先だが、新エネルギー財団の補助を受けて開発が進む。

 ほかにもLPG(液化石油ガス)や天然ガス由来の水素を活用する家庭用装置のほか、燃料電池車を展示する会社も。燃料電池は約40年前、最先端技術として宇宙船「アポロ」の動力源に使われた。それがまもなく家庭段階で使われようとしている。水素社会に向かう扉が目の前に迫っていることを感じた。

太陽、風力で 水素を抽出
 「燃料電池は、石油漬け社会が、自然エネルギー利用へ向かう筋道の1つ」と語るのは「燃料電池」(ちくま新書)の著者で、システム技術研究所(東京)の槌屋(つちや)治紀所長。燃料電池も含めた水素型社会の実現に向けて「太陽光、風力発電で得た電気で水を分解し、水素を取り出すのが理想型だ」と強調する。

 地球上に普遍的にある水素を活用するのは、環境面はもとより、エネルギー戦略上も魅力的だ。しかし、水などから水素を取り出す作業にはエネルギーが必要で、さらに水素ステーションなどのインフラ整備に多くの資材を使う。「ライフサイクルアセスメント(LCA)の観点でデメリットが大きい」とする反論があるのも事実だ。

 槌屋氏は「化石燃料は残り少ない。地球環境面での悪影響も看過できない。人類は『狩猟型』から、自前でエネルギーを生み出す『耕作型』に転換しなければならない。画期的な技術を目先の損得勘定でなく、長い目で見て育てなくては」と訴える。

 さらに、家畜ふん尿や木材、食物残さなどのバイオマス(生物由来資源)が豊富な十勝の現状を踏まえた上で、「自然由来の『グリーン水素』が高く取引されるような地域循環の仕組みをつくってほしい」と期待を込めた。

 発電所からの長距離送電を伴わない分散型システムが燃料電池の特徴。水素を生み出す素材に恵まれた十勝は、実践、研究の場として有望だ。
(おわり、広田実)
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広田実 
 会場が熱気に満ちあふれていた「エコプロダクツ」が強く印象に残っています。帰りの飛行機を遅らせて、2日間にわたって、展示を取材しました。
 燃料、家電、飲料…名前をよく聞く、さまざまな有名メーカーに加え、鉄鋼、建設資材など意外と思える会社も出展していました。国の関連機関やNPO、NGOも「環境対策」の大合唱。「エコ」の潮流に乗り遅れまいとする姿勢を強く感じました。
 経済、産業界も含めて社会は大きく動き出しています。しかし、環境に優しい暮らしは、行政のスローガンや企業のイメージ戦略だけでは達成できません。熱気いっぱいの会場に身を置いて、自分たち市民が危機感を持って、自ら動くことの必要性を痛感しました。
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