WEB TOKACHI
十勝毎日新聞社
WEB TOKACHI
Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
>>> 目次ページに戻る

6.ミニ水車 長野・大町市 山梨・都留市



<ミニ水力発電>小水力発電とも呼ばれ、おおむね1000キロワット以下の水力発電を指す。水のエネルギーで水車を回転させ、水車に連結した発電機で電力を創出。落差が大きく、流量が多いほど発電出力は増加する。「新エネルギー等電気利用法」で、水路式の1000キロワット以下の水力発電は「新エネルギー等」に位置づけられた。
[2006.01.10]

埋もれた資源に見直しの機運
手続き煩雑、水利権に壁
「長野県大町市の養魚場に設置された水車。奥に見える東京電力・大町ダムとの対比を考え景観を重視した
 幅60センチの農業用水路を勢いよく流れる水。ありふれた風景から電力が生まれることに、感動に似た驚きを覚えた。

河川の流れ そのまま利用
 「埋もれている資源からエネルギーを引き出し、地域おこしにつなげたい」。長野県大町市にあるNPO地域づくり工房(任意団体)の傘木宏夫代表理事(45)は力を込める。環境意識の高まりで、河川の流れをそのまま利用するミニ水力発電が見直されているのだ。

 北アルプスのふもとに広がる水に恵まれた大町市。ダムやオリンピックなど外部開発から脱却し、自然環境を生かした市民主体の地域づくりを進めるため、住民や事業者らが集まり2002年に同工房を設立した。

 全長220キロの農業用水に着目し、翌年から3カ所で実験を開始した。その1つが幅60センチ、落差45センチの農業用水に設置したらせん型水車。200ワットの電力は蓄電して家庭や電気自動車に使う。

 2005年9月には市内養魚場で事業化に着手。上部の池から毎秒0.01立方メートルの水を引き、落差3メートルで250ワットを発電する。国産製品は少なく直径2.5メートルの水車は手作りだが、「工夫や挑戦のしがいがある。地場企業の新たな仕事にもなる」と魅力にとらえる。

 発電時に二酸化炭素は出ず、消費場所の近くに設置でき送電ロスが少ない。「環境に優しい省エネ生活を支援する仕組みとして、地域資源を活用して循環させることが大切」。傘木代表はミニ水力の意義を語る。

申請書類は 大型ダム並み
 課題となるのが水利権だ。同工房も河川法に基づき国に許可申請したが、大型ダムと同じ流量測定や大量の資料を求められた。農業用水の使用には土地改良区の同意も必要。煩雑さが普及を妨げる一因に挙げられる。

 企業や研究者らでつくる小水力利用推進協議会の中島大事務局長(44)も「大規模と小規模水力は技術体系も異なり、分けて考えないと進まない」と注文。水利権を持つ自治体や土地改良区の理解が重要と主張する。

 ミニ水力の普及・啓発を目的に、山梨県都留市は管理する家中川に直径6メートルの水車を建設。設置費4300万円の一部に公募債を充て、市民発電所として4月に稼働する。最大20キロワットを発電、庁舎電力の約2割(年間170万円分)をまかなう。

 「実験の場として家中川を提供し、研究者と農家のコーディネートを担う。石油代替エネルギーのフィールドミュージアム(野外博物館)にしたい」。重原達也政策形成課長補佐(48)は強調する。水力発電の大敵であるごみを減らし、生活に溶け込ますには市民の協力が必要で、目に見える形の大型水車はそのシンボル性も兼ね備えている。

 同協議会の試算では、ミニ水力の発電可能量は全国で300万キロワット。原発3基分にも相当する。個々の発電量は小さくても数のスケールメリットがあり、設置が増えればコスト低下や技術革新が期待できる。中島事務局長は「計画的に24時間発電できる。ほかの自然エネルギーとの組み合わせが効果的」とし、水利権がない工場や空調排水の活用も有望と指摘する。

 身近な水資源の有効利用は、農業王国・十勝に新たな可能性を与えてくれると感じた。
(池谷智仁)。
>>> 目次ページに戻る
池谷智仁
 「水車を見た人が喜んでくれるんですよ。驚きを提供できるのが魅力です」。地域おこしの一環としてミニ水力発電を手掛ける長野県大町市のNPO地域づくり工房。楽しみながら活動する代表理事・傘木宏夫さんの笑顔が印象的でした。
 河川の水を垂直落下させるプロペラ型、わずか60a幅の農業用水に設置されたらせん型水車など、同工房の取り組みは驚きの連続。商店街の暗きょ排水でアーケード照明用の電力を生み出すことも計画しています。
 事業化に当たりESCO事業を採用。設備費用は同工房が負担、削減できた電気代の半分が事業者から支払われる形です。市民運動を経済活動に結びつける工夫を感じました。
 水利権の壁も、2005年12月に初めて一級河川(京都・桂川)へミニ水力が設置されるなど、国の姿勢も徐々に軟化。「実践的に突破することで、規制緩和のイニシアチブ(主導権)を発揮できた」(傘木さん)と、活動の積み上げの大切さを強調していました。
 一定の落差と流量があれば発電可能なミニ水力。全国に眠る資源は、地域の熱意で活用できる様子を目の当たりにしました。
(C) TOKACHI MAINICHI NEWSPAPER >>> WEBTOKACHI トップ