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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan

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5.市民出資の風車が回る 石狩市



<風力発電>低いコスト、環境負荷からヨーロッパなどで導入が進み、ドイツでは全電力の約6%を占める。日本の風力を含む自然エネルギーの割合は約0.4%で、2010年に1.3%を目指している。国内累計導入量は924基、総設備容量は約93万キロワット(04年度)。市民風車の詳しい情報は、HGFホームページ
(http://www.h-greenfund.jp)へ。
[2006.01.09]

「未来への贈り物」に共感続々
エネルギーの自己選択に扉
「みんなでやらなきゃ化石燃料なくなるよ。地域でやろうよ−というメッセージをみんなに伝えたい」。市民風車から環境活動を広げる羽田理事長
 「地球温暖化問題に自分たちの市も取り組んでいる。うれしく、少し誇らしく思いますね」

 一面の雪景色となった石狩放水路沿いの工業団地内に建つ高さ約80メートルの白い風車を見上げるのは、地元・石狩市のNPO「ひとまちつなぎ石狩」の羽田美智代理事長。この「市民風車」の出資者の1人でもある。

 風車は2基。1基の出力は1650キロワットで、約1100世帯の電気を賄うことができる。

 「自分たちも参加するこの風車を使って何ができるか。『うちの町』と環境問題をつなげることを考えていきたい」。2005年の風車完成をきっかけに、CO2による地球温暖化問題を考える環境教育など住民活動の幅を広げている。

出資を募り 売電益を還元
 一般市民から出資を集めて風車を建設、売電益を毎年出資者に還元する「市民風車」。このシステムを国内にいち早く導入したのが、札幌市のNPO「北海道グリーンファンド(HGF)」(杉山さかゑ理事長)だ。

 「食は安全なものを選んで買える。電力も選べてもいいのでは」。1997年、生協職員だった鈴木亨・現HGF事務局長や主婦らの素朴な疑問が始まりだった。当時行き詰まり気味だった原発反対運動に対し、代替案を提案する活動も必要と感じていた。

8億6千万円 今年5基運転
 99年にHGF設立。最初の事業が、電気料金に一定の寄付を上乗せし、自然エネルギー普及に役立てる「グリーン電力」制度。ここで集まった600万円から出発した風車建設の呼び掛けに賛同の輪が広がり、約1億6000万円に。01年に宗谷管内浜頓別町で市民風車第1号「はまかぜちゃん」の羽根が回り始めた。

 動きは秋田、青森にも広がり、03年に全国から出資を募る「自然エネルギー市民基金」を設立。06年は8億6000万円を集め、茨城、千葉などで5基が運転を始める。
 「私たちの世代は環境を破壊してきた側。『これだけCO 2を減らせた』と次の世代にこの事業を贈りたい」。鈴木氏は風車を「未来へのプレゼント」と考えている。

作った電気 みんなで購入
 「エネルギー、環境に対して自己選択ができるという扉を開いた」

 自然エネルギー市民基金代表理事の飯田哲也NPO「環境エネルギー政策研究所」(東京)所長は、新エネルギー普及に重要なものを「地方自治体の政策=エネルギーに関する地域の自己決定」と指摘する。

 道内では電力買い取り枠が満杯で新規の市民風車建設が難しいなど、国や電力会社の壁はまだ厚い。しかし市民風車には、運動への共感だけでなく、金利を重視する層まで幅広い出資が広がっている。飯田氏は昨年は長野、今年は岡山で市民出資による地域エネルギー会社設立を進めている。

 鈴木氏は語る。「次は作った電気をみんなで買うシステム。それができて初めて目的達成。それまではやめられないですね」。風車の設置場所は地理的要素に左右されるが、出資という形なら活動は無限に広がる。経済要素を加えた新しい形の市民環境運動が、日本の未来を動かそうとしている。
(小林祐己)
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小林祐己
 「反対でなく対案を」。今回取材した3人から共通して聞かれた言葉です。エネルギー政策という高い壁に自ら行動することで挑み、政策そのものを変えていこうという人々の前向きな力に驚かされた取材でした。
 「市民が作る風車はインパクトがある。とにかく早く」(鈴木さん)。呼び掛けからわずか2年半で1基目が建ったスピード感に、新しい市民活動の可能性を感じました。「今は1人1人が考える『自己』が大切な時代。それをつなぐことで互いの力を発揮できる」(羽田さん)。参加しやすい枠組みを作ることで、小さな思いも大きな力を生むことを実感しました。
 「今できるベストに挑戦した先には、もう一段広い展望、可能性が広がる」(飯田さん)。この十勝で、自分たちには何ができるのか、考えさせられた取材でもありました。
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