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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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4.宇宙から集める 宮城県利府町



<太陽光発電> 国内で約20年前から始まり、現在、25万世帯ほどが発電などに使う。国が設置費用の一部を助成、普及を後押ししてきた。国内には大手太陽電池メーカーが5社ほどあり、パネル製造量は世界トップ。だが、電力源に占める太陽光の割合は1、2%にとどまっている。
[2006.01.06]

軌道上で集光、原発並みに発電
高効率パネル開発も着々
宇宙エネルギー利用や太陽光熱複合発電の研究に携わる関係者(前列右から、三菱総研長山主席研究員、JAXA森センター長、新野招聘フェロー、木皿主任研究員)
 「宇宙では、昼夜、天候に関係なく太陽光が受けられ、地上と比べて6−10倍のエネルギーが得られる」。環境問題への積極姿勢を打ち出そうと宮城県利府町が誘致、同役場前に設置した高効率の太陽電池試験機の前で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の森雅裕・総合技術研究本部高度ミッション研究センター長が、宇宙エネルギー利用について説明する。

 太陽光発電は、住宅などの屋根に載る電池パネルや電卓、腕時計など幅広い利用で一般化している。しかし、JAXAでは、宇宙のエネルギー源として太陽光に着目、研究を進めている。

 スケールはけた違いだ。構想では、地上3万6000キロの静止軌道に飛ばした装置で太陽光エネルギーを地上に送る。集光ミラーは直径2、3キロにも及ぶ大きさ。集めた光は、マイクロ波かレーザーに変換して、地上の発電施設に伝達。そこで、原子炉1基分(100万キロワット)の電力などを得る。「レーザーを水中の電極に当てれば、水素を取り出すことも可能」(森センター長)で、石油代替エネルギーの1つと目される水素の供給力増強も期待できる。

 2030年ごろの実用化を目指しJAXAは、レーザーを飛ばす際に大気から受ける影響などを調べている。

宇宙エネルギー利用システムのイメージ(三菱総研提供)
費用課題も可能性無限 
 ただ、宇宙エネルギーの実用化には大きな現実問題が存在する。研究にかかわる三菱総合研究所の長山博幸・科学技術研究本部宇宙情報グループ主席研究員は「初期投資額が大きい」と指摘する。システム構築には推計で2兆円かかる。

 だが、研究者らは、無限の可能性を力説。長山氏は「宇宙で太陽光が得られるようになれば、日本がエネルギー輸出国にさえなれる」と話す。

 センターの新野正之招聘(しょうへい)フェローは「(技術の応用で)砂漠の緑化や、食糧問題解決も図れる」と説く。レーザーの波長が、イネの成長速度を約5倍上げたとの研究結果がある。地下水を張った砂漠内の区域に宇宙から照射すれば、植物成長の促進も期待できるからだ。

未電化解消で中国と研究
 宇宙という究極の自然条件下でエネルギーを得るという設計思想は、高効率の太陽電池開発に生かされている。

 日本と中国が共同で開発を進める「太陽光熱複合発電システム」がそれだ。厚さ1ミリ、面積3平方メートルのレンズで太陽光線を集め、目に見える光と、電気に変換不能とされてきた赤外線を分離。可視光は太陽電池で、赤外線は熱として集め電気に変える。

 このシステムだと「従来の太陽光発電に比べて約2倍の電力が得られる」(センターの木皿且人主任研究員)。宮城・利府町の試験機で性能を確認後、今年4月以降に、中国・内モンゴルの砂漠地帯で耐久試験を1年間行う。いずれは「未電化地帯の約1億人にエネルギー供給するのが目標」(木皿研究員)だ。スケールの大きさに再び驚いた。

 新野招聘フェローは言う。「風力、波力などいろいろな自然エネルギーがあるが、それらの源はすべて太陽。太陽とどううまく付き合うかが、これからの人間の知恵だ」

 十勝は日照時間の長いことで知られている。帯広の年平均日照時間(1971−2000年)は2016時間で、全国有数の長さ。進化し続けるこれらの知恵を上手に利用できれば、降り注ぐ太陽は大きな資源になる可能性を秘めている。
(深田隆弘)

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深田隆弘
 「頭がパンクしていませんか」。取材の最中、第一線の科学者が、科学オンチを自認する記者を気に掛けてくれました。
 このシステムが実現すれば、無限のエネルギーを安定的に得られることが期待できます。中国やインドがエネルギーを必要とすれば、宇宙に浮かべた装置の向きを変え、輸出国として供給することも考えられるそうです。主要なエネルギー源が太陽光に変われば、石油をめぐる中東での利権争いも無くなります。
 石油はあと30−40年、原子力の燃料、ウランは70−100年で枯渇すると言われています。
 「今のうちに、クリーンで、昼夜違わず(家庭などに)電気を送るシステムをつくらねばならない」。難しいことほど分かりやすく、科学者らは4時間にわたり、分かるまで説明してくれました。懇切丁寧な科学者の説明は、何としても開発にこぎつけたいとする熱意の裏返しだったと思います。
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