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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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3.サトウキビ燃料 沖縄県伊江村



<バイオエタノール> 植物資源を発酵、あるいは化学処理させて作るエタノール。ガソリンへの混合割合によって「E3」「E5」「E10」などと呼ばれる。金属を腐食させる性質を抑えるための成分を加えた「ETBE」も研究されている。昨年の米国の生産量は152億リットルで、5年間に2・5倍に急増した。伊江村のプロジェクトは、内閣府、農水省、経産省、環境省が連携して推進されている。
[2006.01.05]

島の特産物に新たな可能性
施策未整備、重要な地域発信
エタノール収量が3倍以上にもなるモンスターケーン(右が小原研究員。アサヒビールR&D本部技術開発研究所提供、05年12月撮影)
共同研究が将来を握る
 「この島が、サトウキビからバイオエタノールを作る事業の出発点となったのは光栄。ぜひ、取り組みを成功させたい」−。北海道から約2300キロ離れた沖縄本島北部の西方に位置する「伊江島」。1島1村の伊江村役場の浦崎悟農林水産課主事(28)の声は期待であふれる。

 同村は2005年から、アサヒビールR&D本部技術開発研究所(茨城県守谷町)と農業・生物系特定産業技術研究機構九州沖縄農業研究センター(九沖農研、熊本)の共同研究の舞台になっている。島の屋台骨を支えるサトウキビの将来を切り開く研究だけに、村は全面協力態勢だ。

 「サトウキビは茎、葉を余すところなく使える優れた作物。さらに、エネルギーへの利用で可能性は無限に広がる」と同研究所の小原聡研究員(33)は意気軒高だ。ビールメーカーの醸造技術を駆使して、効率的な製法を深める一方、九沖農研が製糖量を減らさずに、エタノール量を増やせる新品種「モンスターケーン」を開発、共同研究は順調に進んできた。

 昨年8月には1日に40キロの砂糖と20リットルのエタノールを製造できる実験プラントが島内に完成した。エタノール3%混合の「E3ガソリン」用スタンドも村内1カ所に整備。今月から村の公用車63台で走行試験に移る。「得意分野であるアルコール製造技術を使い、環境問題でも役に立ちたい」と小原研究員は話す。

 村では04年に地元JA経営の製糖工場が閉鎖された。国産砂糖がだぶつく現状下で、製糖を取り巻く環境は厳しい。島の小さな工場では、スケールメリットを出せず、採算を取るのが難しかった。「農業の柱がサトウキビなので、閉鎖による地域経済への影響は甚大。輪作体系や地力維持のためにも新たな用途開発が急務」と浦崎主事。それだけに共同研究に寄せる期待は極めて大きい。

国の先行く先頭走者に 
 同村のプロジェクトは、農作物からエタノールを製造する取り組みで国内最先端を走る。時には国よりも先行し、政策に示唆を与えるほどのトップランナーだ。

 産業技術総合研究所バイオマス研究センター(広島県呉市)の坂西欣也センター長は「税制を含めた国の政策はまだ整っていない。だが、逆にみれば、すでに取り組んでいる自治体にとってはチャンス」とみている。

 十勝でも昨年、規格外小麦からエタノールを作る試験が行われた。「むしろ大事なのは、製造の技術そのものより、流通態勢も含めてそれをどう利用していくかだ」と坂西センター長。「地域のコンセンサスを一つずつ積み上げ、『E3タウン』『バイオマスタウン』の取り組みを積極的に発信し、国に制度改正などを働き掛けていくこと」と“地域発信”の重要性を強調する。

 バイオエタノールの国産価格は、ブラジル、米国などと大きな差がでるとみられる。単純に採算面でみると、競争力には疑問符がつくが、「地場農業との関係やエネルギー自給の重要性を考えれば、取り組む意義は十分にある。経済として成立する可能性があるのは、ある程度まとまった原料がある北海道と沖縄だ」(坂西センター長)。

 植物由来のバイオ燃料の生産が増えるのは、世界の趨勢(すうせい)。国内最大の農業地域・十勝がバイオ燃料の分野で日本の先導役を果たすのは「責務」に近いと感じた。
(犬飼裕一)

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犬飼裕一
 バイオマスエタノールを事業化する上で、農業王国・十勝はとても環境に恵まれていることを改めて感じました。
十勝は小麦、ビートなどエタノールの原料が豊富にあります。石油の代替燃料を製造するために食料を使うことへの倫理的な問題を指摘する声もありますが、逆に十勝のような農業地帯の場合、こうした燃料用作物がメニューに加わることは、良質な農地を後世に伝えていくために必要な「輪作体系」を維持する上でも有効に働くでしょう。
 バイオエタノールは食物が固定したCO2を空気中に排出するだけなので、計算上はCO2を増やしませんので、温暖化対策には有効です。しかし、普及するためには価格が問題になります。坂西センター長は「行政のPRはもちろん、バイオエタノール燃料を販売する側も(バイオエタノールを)混合している分、値段を安くするなど付加価値を付けることが重要」と強調していました。そのためには国が施策として振興策を取る必要があります。
 いずれにせよ、十勝は原料の生産からエタノールの製造、そして流通、消費まで、さまざまな実験に取り組む素地が整っており、日本をリードしていかなければならないと感じました。
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