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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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2.ふん尿は資源 京都府南丹市



<バイオガス> ふん尿や生ごみ、汚泥などの有機物から嫌気性発酵(メタン発酵)で得られる可燃性のガス。これを燃焼させて熱や電力を得る。メタン発酵自体は1600年代から欧州で実用化されている技術。新エネルギー源としてのバイオガスプラントは90年代から世界中で研究が始まり、先進地ドイツでは1000基以上が稼働中。2005年末現在、十勝では個々の農家で設置する「個別型」が10基。
[2006.01.04]

全戸利用で炭素循環に貢献
食物残さを混ぜ効率アップ
ふん尿を完全密閉し、バイオガスを発生させる消化槽(中央の緑のタンク)。原料投入口以外はほとんどふん尿特有の臭気を感じない
 「バイオガスプラントは有機物からエネルギーのメタンを分離することができ、炭素のリサイクルに貢献できる」

 京都府南丹市で「八木バイオエコロジーセンター」を運営する同市八木町農業公社の中川悦光事務局長は、バイオガスプラントのメリットを「農業現場のふん尿処理とそこから再生されるエネルギーによる環境負荷低減にある」と話す。

毎日70トンを受け入れる
 センターは「エネルギーの地産地消」を実践、全国からの視察者が絶えない。1998年に国内初となる牛1000頭規模の広域利用型プラントが稼働。現在は毎日約70トンの家畜ふん尿や食品残さを受け入れ、得られたメタンガスで3基のエンジンを回す。

 発電量は日に3700キロワット。一般家庭の1日の使用量を10キロワットとして370世帯分だ。このうち3000キロワットは施設内で利用、残り700キロワットを近隣の下水処理施設と電力会社に売り、年間400万円を稼いでいる。

 南丹市は京都市から北西に車で約1時間ほどに位置する。今年1月1日に4町(美山、日吉、八木、園部)の合併で誕生した人口3万4000人の新市。

 旧八木町は1995年度という早い時期に新エネルギービジョンを掲げ、「環境にやさしいまちづくり」を進めてきた。センター設置も「エネルギーを地域で賄うのが目的だった」(中川事務局長)と言う。

 プラントの効率アップに工夫もある。それは、家畜ふん尿だけでなく町内の豆腐工場から廃棄される「おから」を利用している点だ。中川事務局長は「日に6、7トンでふん尿に比べれば少ないが、食品残さの有機物量は大きく、貴重なエネルギー源」と話す。

 一方、ふん尿を運び込む酪農家にとっても、プラントは労力が軽減されたと好評だ。

 乳牛50頭を飼養する斉藤照夫さん(58)はセンターを使う前、ふん尿を引き取ってくれる畑作農家探しに苦労し、運搬作業にも時間を割かれた。「今はここに持ってくるだけ。楽になったもんだ」と笑顔で話す。ふん尿を搬入する作業は30分で済む。余力ができた分、増頭に経営をシフトすることができた。

値上げ2度も利用者減らず
 
利用者の負担金は乳牛・豚が1トン850円、肉牛が同680円、おからが同7000円。過去に2度値上げをしたが利用者は減らず、今年度は旧八木町内に14戸ある酪農家すべてが利用した。

 規模は違うとはいえ、地域全体で循環システムを構築した姿は、十勝の一歩先を走っていると感じた。

 だが同センターも、他のプラントと同様、発酵後に残る「消化液」の利用に課題を残す。消化液に含まれる窒素は3大肥料成分の1つで、この利用は化学肥料の使用量削減に可能性を開く。しかし、液状で成分が薄いため大量に散布する必要があるなど普及には壁が立ちはだかる。

 有機物からエネルギーを取り出す「炭素循環」は、技術的にほぼ確立している。中川事務局長は「『窒素循環』が成り立って初めてバイオガスプラントは成功」と力を込め、現在も水田への消化液還元試験で可能性を追求し続けている。

 十勝は全国で最も施設が集中する“バイオガスプラント銀座”だ。その十勝の実情にあった形で、炭素、窒素の「循環システム」をこれからどう構築するのか−。この課題はエネルギーと同時に、酪農の持続的な発展にもかかわってくる。
(高田敦史)
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高田敦史
 京都府南丹市八木町では、未利用有機物資源の持つエネルギーを地域内でうまく循環していました。
 大規模酪農の十勝では個別型が主流です。しかしプラントはまだまだ建設コストが高く、普及が進んでいません。八木町の仕組みは普及へのヒントとなりそうです。
 ただ八木町にも課題はあるようです。稲わらなどを寝床にひかないフリーストール牛舎の普及でふん尿の水分含量が高まり、総搬入量に対する有機物量がプラントの当初計画を下回っています。このため効率的な稼働には至っていません。
 バイオガスは原料(ふん尿)の性状が重要です。砂などの異物が配管を詰まらすトラブルも多いと聞きました。このため地域で共同利用する場合は、個々の利用農家がふん尿内の異物を極力減らし、良質な有機物資源を供給する努力が必要となりそうです。
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