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Obihiro Tokachi Hokkaido Japan
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1.てんぷら油で車が走る 京都市



<BDF> 使用済みのてんぷら油(植物性食用油)をメタノールと反応させることで粘性や引火点を低くし、ディーゼル車で利用できるよう精製した燃料。京都市では(1)てんぷら油のリサイクル(2)二酸化炭素の排出抑制(3)自動車排ガスのクリーン化(4)生きた環境教育(5)地域コミュニティの活性化−の「一石五鳥」で、地域循環型社会の構築を目指している。
[2006.01.03]

主役は市民、年13万リットル回収
市バス、ごみ収集車に活用
中村洋子さんと藤原さん(右から)。使用済みてんぷら油の回収は地域での笑顔も生む(京都市西京区で)
 「私たちが料理に使ったてんぷら油でごみ収集車や市バスが走っている。これは大きな誇りですよ」−。古都の風情を今に伝える住宅街で、家庭から排出される廃食用油を回収している桂東地域女性会(山村和子会長)の藤原匡美さん(63)はこう胸を張る。

事業化の契機 COP3
 京都市では1997年12月、地球温暖化防止の国際会議(COP3)が開かれ、一躍世界的な「環境都市」に名乗りを上げた。会議に合わせ、国内の先導役を果たすためにスタートさせたのが、てんぷら油を燃料に変えるバイオディーゼル燃料(BDF)化事業だ。

 市民が回収した廃食用油などを、市直営の施設でBDF燃料に加工する。年間製造量は150万リットル。現在はBDF100%でごみ収集車220台、軽油に20%混合させた燃料で市バス95台を走らせている。

 「回収作業への市民参加とそれを燃料化する技術の確立−この両輪が事業を動かしている」と京都市環境局の中村一夫課長はいう。

 市民回収の“火付け役”は「マチのおばちゃん」たちだ。学区単位で「地域ごみ減量推進会議」などを組織し、家庭からだけで年間13万リットルも集める。回収拠点は、97年度の7学区13カ所が、昨年11月末には156学区、955カ所へと広がった。

 同女性会の回収日は月1回、午前中の約1時間。「回収中」の旗を立て、当番が3カ所に分かれて立ち番をする。持参者には資源ごみ推奨袋1枚を手渡し「またお願いね」と和やかに会話。日常的な井戸端会議の光景そのもので、事業が生活の中に根付いていることを感じさせた。

 京都市ごみ減量化推進会議会長代行の山内寛地域活動実行委員長は「市民が自分たちに合った回収方法を考え、口コミで広まった。普段忘れがちな環境への『自己責任』意識を取り戻すきっかけにもなっている」と“教育的効果”を強調する。

 こうした家庭回収分に飲食店などの排出分が加わり、市全体の原料が確保されている。

技術開発 行政が主導
 事業を支える「燃料化技術」は、行政が先導している。

 開始当初は「燃料中の不純物がフィルターを詰まらせ、エンジン不調などが起こった」(森田佳之燃料化施設係長)。しかし、学識経験者や自動車メーカーなどによる「技術検討会」(委員長・池上詢福井工業大学教授)がサポートし、02年に暫定規格「京都スタンダード」を完成させた。

 市廃食用油燃料化施設の製造能力(日量5000リットル)は、自治体営で国内最大。中村課長は「市民の回収の頑張りに、行政も応えないと」と話す。市民に背中を押され、技術開発は加速し続けている。京都市の実績をたたき台とし、経済産業省が3月にも全国共通の品質規格案を提示する。

 十勝でも、今年からBDF事業化への取り組みが始まる。製造施設「更別企業」(更別村)の為広正彦社長は「氷点下25度で使用できる精製技術も分かった。将来的に農機具などに使えば、さらにクリーンな十勝農業をPRできるはず」と期待を込める。

 京都のように「マチのおばちゃん」たちが主戦力になれば、「十勝スタンダード」が誕生する日も近いと強く感じた。
(本内のぞみ)

※藤原匡美さんの「匡」の字は異体字です。

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本内のぞみ
 「ここまでできるものなのか」という気持ちは、取材から戻った今も変わりません。京都市は人口147万人、65万世帯。回収を拒否する地区が存在するのも現実ですが、それでも市民同士が誘い合って回収拠点は着実に増えています。市民1人ひとりが積み上げてきた意識の結集≠ノ感激しました。
 行政も広報紙などで随時、活発な回収グループや回収量を紹介。さらに京都市環境保全活動センター「京(みやこ)エコロジーセンター」を拠点に、市内全220小学校の5年生は環境教育を受け、「エコメイト」という環境ボランティアも育成しています。寄り道をして見学した同センターに、事業を陰で動かしている「市民教育」という原動力があったことを感じました。京都市で取材してきた理想と現実が、来年度以降、十勝でどう形になっていくかこの目でしっかり見詰めていきたいと思います。
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