年間キャンペーン第4部
日英
市民教育はいま

品川区教委に聞く


学校改革で「組織力」向上

実社会で必要なことを学ぶ

 
 東京都品川区教育委員会は2006年度、全国で初めて制定した「小中一貫教育要領」に基づき、義務教育課程の小・中9年間を「4−3−2制」に再編成する。区内の全校で同課程を実施するとともに、「教養ある良き市民としての資質や能力をはぐくむ」ことを目標にした新教科「市民科」、英語教育の「英語科」を導入し、特徴ある小・中一貫教育を進める。特に、市民科の創設は市民教育の先進的な実践例として注目される。同区教委の吉村潔・小中一貫教育担当課長に同区が進める教育改革、市民教育の意義について話を聞いた。


「社会の中の『個』を育てる市民教育と学校力が重要」と語る吉村課長
知的財産育てる

 −品川区が教育改革に乗り出した経緯は。
 これからの区内の人、物、地域づくりを考える時、学校は文化の先端であり、知的財産を育てる最先端であるべきだと考える。だが、学校現場は30年も前から改革を言われ続けながらも何ら手を打ってこなかったと言っていい。複雑多様な現代では学校が組織体としての力を高めることが求められる。それには“学校力”を底上げするシステムをつくらなければならない。

 −教育要領では学校に何を求めるのか。
 学校の質的転換と教員の意識改革だ。特に、公立は教委がクッションとなり、世間とは接していない面があった。だから成果を上げなくても運営できた。だが、これからは学校が選ばれる存在となり、自主性ある学校づくりをしていかなければならない。区の教育要領はそうした状況をつくることを基礎にしている。外部評価制度の導入で社会環境の中に学校を置き、区が独自に学力定着調査などを実施し“学校力”を高めるよう促す。

座標軸持つ大人

 −市民科を創設した理由は。
 家庭の教育力が低下し、学校が見て見ぬふりをできない時代だ。「生き方」の学習を取り入れて教師が範を示し、児童・生徒は1人の市民としての教養を身に付けることが求められる。子供たちには「われの世界」(個人)と「われわれの世界」(個人と社会、集団)をしっかりとらえ、生きるための座標軸を持った大人になってほしい。そのためには自分のことだけを考えるような(学力成果主義の)教育ではなく、社会の中の「個」としての大人を育てる教育が重要。それが市民科の狙いだ。

 −市民教育の観点ではイギリスに先進例があるが。
 イギリスは宗教教育を基本にした市民教育であり、行き着くところはボランティアを育てること。また、ドイツは社会人として職業を持ち自立することを市民教育で教えている。理念は崇高だが、こうしたいわば西洋的実利主義の市民教育を日本の学校現場に持ち込んでも、生き方や行動に結びつかないことが考えられる。抽象的な悲願ではなく、生きるために必要なことを具体的に示す、子供たちが学校で学んだことと実社会で生きることをつなぐ学習が市民科の実践といってよい。

 −国の「学習指導要領」と区教委の「教育要領」との関係性は。
 区が制定した教育要領は学習指導要領をベースにしていることはいうまでもない。それを地域(品川区)に見合う形にした。これは教育における地方分権の具現化だ。(道下恵次、おわり)(05.10.12)

<品川区小中一貫教育要領>2001年度から、通学する学校を学区を越えて自由に選べる「学校選択制」を区内で導入。02年度には文部科学省の小中連携カリキュラム研究開発校の指定を受け、03年度は小中一貫教育特区に認定された。義務教育の9年間を継続的な教育課程に再編、小・中一体となった指導体制で市民教育などに取り組む。同区の教育実践は日本の教育界初の「地方基準」として、実践と成果が注目されている。

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