年間キャンペーン第4部
日英
市民教育はいま

市民科


人生観構築の基礎能力養う

小・中一貫で具体的に指導


 
 「自分を守る練習できるかな? 逃げる時の約束って分かる?」。9月21日、東京都品川区立第二日野小学校(菅谷正美校長、児童101人)の公開授業で、1年生を受け持つ菅原展生教諭は地震や火災の際の避難について児童に問い掛けた。

phot

傘の畳み方など身近で基本的な事柄を題材にする「市民科」の授業
基本行動を学ぶ

 同校は来年度、同区内の日野中学校(中元順一校長、生徒227人)と小・中一貫教育による「日野学園」に生まれ変わる。一貫教育課程の中で英語科とともに新設されるのが道徳、総合的な学習の時間、特別活動を一体化した「市民科」だ。小・中9年間で自分の人生観を構築するための基礎的能力を養う、いわば「市民教育」のスタートとなる。

 この日の授業は「市民科」のモデルケースとして公開された。菅原教諭は災害時の安全な避難方法について、きめ細かな授業を展開した。「いろいろな場面で君たちは自分を守らなければなりません」。授業では災害時の「心構え」よりも「自己管理」に重点を置いて進められ、ラジカセを使って地震時の「ゴーッ」という音を流し、その瞬間児童がどう対処したらいいかをシミュレーションした。

 一方、2年生の市民科の授業。吾妻優子教諭は「ものを大切に」と題し、自治的活動をとらえた授業を行った。傘の畳み方や傘箱への入れ方といった、児童にとってはごく身近なことに時間をかけてじっくりと説明した。こうした実践は、自治を支える「市民」としての基本行動を学ぶという視点に基づく。

長期的、段階的に

 菅谷校長は「子供の発達には波があり、人のかかわりを必要とする4年生までと、第二次“性徴期”に入って『個』に戻る5年以上では考え方や価値観が大きく転換する。特に、個に戻る時期にしっかりとした価値観を植え付けることが重要」と指摘する。

 小・中一貫教育校の創設に伴ってつくられる新教科「市民科」は、同区教育委員会が研究開発した。一貫教育課程の計9年間の中で社会の一員としての義務と責任を果たす能力を身につけることが狙い。モデル校に指定した第二日野小、日野中のほか、同区内の全校で来年度から教科に組み入れる方針だ。

 市民科は自己管理能力から社会や集団とのかかわり、さらに人生観を持った将来設計へと段階的な領域を設定し、一貫指導を目指す。これは「まさに長期的な市民教育の実践」(区教委)でもある。

ぼかさず教える

 「これまでの道徳教育では、いわば良き社会人となるための努力目標を示していたようなもの。これに対し、社会の基本的なことや諸問題をぼかさずにきちんと教える市民科は、(市民づくりへの)具体的な実践結果を示していくものだ」と菅谷校長は強調する。

 今やインターネットや携帯電話などでさまざまな情報がはんらんする中、「子供たちはでこぼこな価値観を持つ。これを平準化するのは学校教育以外にない」(菅谷校長)。市民科の実践は子供たちの「生きる力」をはぐくむことを最重点に置きながら、社会を支える「市民」としての生き方も探求する。(道下恵次)(05.10.11)

<市民科>小・中一貫教育の新教科として実施。(1)個にかかわる「自己管理」(2)個と集団・社会をつなぐ「人間関係形成」「自治的活動」(3)社会にかかわる「文化創造」「将来設計」の3段階5領域を設定し、責任遂行能力やコミュニケーション能力、社会的判断・行動力などを身に付けることを目標にする。授業時数は1−4年生70時間、5−9年生105時間。

|6|index


HOME