年間キャンペーン第4部
日英
市民教育はいま

フェア・トレード


「公正な世界」へ意識付け

多様な価値観の中から判断


 
割高でも選択

 イギリス・ヨーク市では、街角のあちこちで「フェア・トレード商品」が売られている。発展途上国から輸入したコーヒー、紅茶、毛織物…。マークが入ったそれらの品々は国内の量産品より割高だが、あえてマーク入りの商品を手に取る市民の姿が目立つ。

 「もしあなたがそうした商品を積極的に選んで買うなら、貧しい国の家族の食卓に食事を並ばせ、子供たちを学校に通わせることにつながるだろう」

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フェア・トレードを街ぐるみで実践するヨーク市の街並み。さまざまな店で、フェア・トレード商品が扱われている
 イギリスの市民教育を学ぶ「開発教育スタディーツアー2005 in York(ヨーク)」(NPO開発教育協会主催)で、グローバル教育センター主宰のマーゴ・ブラウン氏が、日本から参加した教諭らに語りかけた。そして、次のように付け加えた。

 「今言ったことは消費活動の考え方の1つにすぎない。どのように受け止め、行動するかは、あなた自身が責任を持って決めること」

一般市民に浸透

 ブラウン氏の問いかけに参加者は一瞬、押し黙るしかなかった。なぜなら日本でも、発展途上国で生産された品が輸入され、日常的に消費されている。決定的な違いは、イギリスではそれが政策として取り組まれ、何より「フェア・トレード」の精神が一般市民にまで浸透していることだ。

 兵庫県から参加した男性教諭は「フェア・トレード商品を選ぶことは、日本の消費者が無農薬野菜を買うのと同じ意識が働くのでは」と率直な感想を述べ、「健康意識と同様に日本人の市民意識が高まればフェア・トレード商品はますます消費されると思う」と期待を込めた。

 また、神奈川県の女性教諭は「多くの人がフェア・トレード商品を購入すれば、市場は拡大する。まず、フェア・トレードの考え方や商品の存在を知ることが大切」と話す。その一言は日本でのフェア・トレードの浸透に向けた参加者の胸の内を代弁しているように感じた。

 発展途上国の置かれた現実を認識した上で、値段や品質、好みなどの多様な価値観がある中から、何が公正かを判断するプロセスは、まさにイギリスの市民教育の核となる部分だ。

「何ができるか」

 ブラウン氏はフェア・トレードを市民教育に導入する理由を「消費活動からでも、公正な世界を実現するために行動できることを意識付けるきっかけにもなる」と強調する。

 市民教育は、社会の現象や課題を理解し、その中で自分に「何ができるか」を考えさせることに徹底する。こうした繰り返しは、市民1人ひとりに存在意識を根付かせるとともに、「生きる力」をはぐくむことにもつながる。イギリスで目にした市民教育の実践は、こうした意識付けの積み重ねであり、その先には「公正で平和な世界の実現」を期待させる前向きな姿勢があった。
(杉原尚勝)(05.10.05)

フェア・トレード商品であることを示すマーク
<フェア・トレード>

 発展途上国との間で公平な貿易を実現し、途上国の生活向上を支えようとする国際貿易の概念。1960年代に欧州で本格的に広がり、イギリスでも広く浸透している。ヨーク市は2004年、街ぐるみで実践する「フェア・トレード・シティー」に登録。現在、フェア・トレード商品を取り扱う店が登録当初の5倍に当たる100件余りになるなど、英国内で積極的に取り組む代表的な都市として知られる。

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