年間キャンペーン第3部
人材の掛け橋
パイオニアたちの挑戦

「創造塾」主宰・北本善一さん(55)


人間同士で遊べる場を

子供たちの創造性育成



■放ったらかしに

 「自分で考えるまで待つ」というのが僕のモットー。子供に疑問を持たせたり、考えたりする時間を与えないとクリエーティビティ(創造性)は生まれません。大人が手を貸すと確かに物は出来上がるけど、一番大切なのはどういう工夫をするか考えること。だから僕は子供たちを放ったらかしにします。助けを必要とした時に手を差し出すだけでいいと思うんです。

 19歳の時に漫画家を目指し、東京で教育系漫画を数多く手掛けてきた。1994年に出身地の士幌町にUターン。職業柄、子供たちと接する機会が多く、最近の子供たちには少しずつ変化を感じていた。学歴社会、偏差値教育から脱落しないための塾通いで、大人より過密なスケジュールをこなす日々。核家族化、少子化で遊び相手も少なく、休日でも無機質なテレビゲームと向き合う子供たちが増えた。今の子供たちに何より足りないのは、生身の人間と屋外で一緒に遊ぶことだと直感した。

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子供たちに絵を教える北本さん。模写で観察力を養うのが狙いだ(帯広市主催のイラスト達人講座で)

 僕もゲームづくりにかかわったことがありますが、つくる側にとってはクリエーティブな仕事です。ただ、それを使う側には全く創造性は生まれない。人間同士の遊びなら相手に情けや思いやりをかけ、そこから社会性を身に付けますが、ゲームからは何も得られません。だから「人間対人間」で遊べる環境をつくりたかった。それが創造塾です。遊びの中に工作や絵を取り入れ、子供たちの創造性、つまり自分で考える力を伸ばしていきたいと思っています。

 自然の中から集めた材料での工作や段ボールを使った巨大迷路づくり、キャンプ。すべての遊びの中に「考える種」が仕込まれ、自由に振る舞わせる中で気付かせるのが創造塾の手法。子供たちは、多くの異年齢の人間と接する中で、自然と自分の役割を見いだすという。

■不要な人いない

 例えば子供が料理に興味を持って台所に来ても、「部屋で勉強しなさい」なんて言っちゃ駄目。どうせ1人で勉強なんてしないんだから。興味を持ったらまずやらせて、質問されたら教える。そうして技術や知識を身に付け、役割を果たせるようになるんです。「自分が空気みたいな存在」と自分の存在意義を見いだせない子供って多いそうですね。でも、不必要な人間はいないと思うんです。特に中学生くらいから「おまえがいないと困る」という環境をつくるのがとても大切。スポーツなんか分かりやすい例ですが、僕はこれを文化系の何かで実現したいと思っています。

 今年4月には活動の場を新得町にも広げ、6月までの計10回、集中的に開催した。現在は活動を引き継いだが、“北本イズム”は確実に底辺を広げ、人づくりの輪が形作られようとしている。

■考える楽しさを

 別にアーティストを育てようとも、真っ正面から子供を育てようとしているわけでもないんです。ただ、自分で考えることの楽しさに気付かせてあげたいし、そのための創造性を伸ばすのは子供のうちが一番。何も考えずに生きていける世の中だけど、考える人間がいなければ何も変わらないんだから。

(高田敦史)(おわり)(05.07.11)

<創造塾>小・中学校で隔週の週休2日制を取っていた1999年、士幌町中士幌で工房「あとりえ・ぜん」を構える漫画家、イラストルポライターの北本さんが“遊びの教室”を始めた。子供が休日を過ごす場がないことに不安を感じていたのが理由。(1)大勢の(2)異年齢と(3)屋外で−遊ぶことが基本。遊びの中に「創作活動」というきっかけを提供し、自ら考えるための原動力となる「創造性」を伸ばすのが狙い。小・中学生が対象で月1回程度の活動。

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