年間キャンペーン第3部
人材の掛け橋
パイオニアたちの挑戦

「うりまくライディングチーム」指導員・井出理恵さん(39)


自信育ち、愛情芽生える
チームワーク活動の基本に



■言葉で指示

 馬に乗るためには馬房を掃除し、手間のかかる馬体の手入れをして十分に馬とコミュニケーションを取らなければいけません。馬と気持ちが1つになれば、自分が主導権を持ち、しっかりと言葉を発して指示できるようになります。これが子供たちの自信となり、人と接する時にもしっかりした言葉で自分の言いたいことを伝えられるようになるんです。

 1995年、鹿追町の乗馬施設「ライディングパーク」のきゅう務作業の「お手伝い隊」として、小・中学生ら十数人が乗馬クラブ「うりまくライディングチーム」を旗揚げした。主に土・日曜に活動し、きゅう舎清掃に汗を流すほか、実際に馬に乗って触れ合っている。

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乗馬を通じた情操教育で人材を育て、地域振興への橋渡し役を果たす井出さん

 生き物である馬を大切にすることは、もともと情操教育の目的があります。さらに、互いに助け合っての作業はチームワークを大切にすることにもなるんです。生き物への愛情の芽生えと、リーダーを中心としたルールの徹底やチームワークづくりが活動の基本です。

 同チームが活動するライディングパークの近くには、本州からの山村留学を受け入れる十勝管内最大の全寮制施設「鹿追町自然体験留学センター」がある。さまざまな事情から親元を離れて山村留学する小中学生10人が入寮。同チームのメンバーは毎年、この山村留学生がほぼ半数を占める。

■次第に和む心

 最初は、都会から来て馬の扱いが分からない子や、まったく興味のない子もいますが、世話をするうちに次第に慣れ、心が和むようになります。それがアニマルセラピー(動物介在療法)といわれるものです。大自然に触れて乗馬を楽しむという、北海道ならではの自然体験も都会の雑踏に疲れてしまった子供たちの心をリフレッシュさせます。

 親元に帰るころにはすっかり子供らしくなっていますよ。言いたいことも言えずに考えすぎて大人っぽく振る舞う子供が多かったのですが、乗馬を通してすっかり“自分らしさ”を取り戻すようです。

 障害者乗馬B級指導資格を持つ井出さんの元には、乗馬レッスンを希望する障害者も全国から集う。乗馬自体がさまざまな療法に活用され、運動機能の回復に一役買っている。メンバーはこうした障害者乗馬にもボランティアとして参加し、車いすから馬に乗り込む手伝いをしている。

 同チームのメンバーはこの10年のピーク時に40人を超えた。山村留学を終えて各地に散らばったメンバーが、チームの活動を全国に発信する原動力にもなっている。同ライディングパークを訪れる修学旅行生は年間最大800人。直接のかかわりこそないが、こちらの方のPR効果も決して少なくない。


 メンバーが大きくなって障害者乗馬の作業療法士や獣医などになると聞くととてもうれしい。こうした子供たちが各地で当時の乗馬体験を生かしてくれれば乗馬全体のすそ野が広がります。毎年開かれる全国的な乗馬耐久競技「全日本エンデュランス」でも活躍する高度な技術を持った指導者を育てることは、結果としてこの地域の振興にもつながると思っています。

(道下恵次)(05.07.07)

<うりまくライディングチーム>鹿追町瓜幕にある町ライディングパークを拠点に、地域の小・中学生が乗馬やきゅう舎活動するジュニアチーム。乗馬では各種大会にも出場し、活動の成果を披露する一方、きゅう舎作業や各種イベント・大会のボランティアとしても活躍。今年のメンバーは35人に上る。

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